家庭の料理のお悩みを解決してくれる救世主として大人気の、料理家・家政婦のタサン志麻さん。新著となる『志麻さん式 定番家族ごはん』(日経BP)は、子育て世代に嬉しいパパッと作れてアレンジも効くレシピと共に、毎日の料理がラクになるヒントがふんだんにちりばめられた一冊です。伝説の家政婦として、本やテレビで膨大なレパートリーを披露する志麻さんですが、「“いつもレシピが頭の中にあるんでしょ?”と思われるのですが、家では全然そんなことないんですよ」と語ります。だとしたら志麻さんは普段、「献立が決まらない」「料理する時間がない」「片付けがしんどい」といった課題をどう克服しているのでしょうか? 育児に仕事にと奮闘する志麻さんに、料理の“ツライ”を乗り越えるアドバイスをインタビューでお聞きします。

 

タサン志麻さん:大阪あべの・辻調理専門学校、同グループ・フランス校卒業。フランスの三ツ星レストランで修業後、日本の老舗フレンチレストランなどでシェフとして約15年のキャリアを積む。2015年、フリーランスの家政婦として独立。フレンチのシェフとして培ったプロの料理を、顧客のニーズに合わせて家庭料理として提供する、その家にある食材で3時間十数品を作るといった“スゴ腕"が評判となり、「予約の取れない伝説の家政婦」として注目される。東京で、フランス人の夫と2人の息子、愛猫と共に4人+2匹暮らし。

 

POINT①:レシピは詰め込まず必要なぶんだけ。
ベーシックを身につけてアレンジで幅を広げる


本書で驚いたのは、「メイン10品・付け合わせ10品で、メニューを固定化して2週間を乗り切る!」というアイデア。料理のレパートリーは多ければ多いほどいいと考えがちですが、志麻さんの献立解決策は決して“数に頼る”ことではないといいます。

「私は料理の仕事をしていますが、家では冷蔵庫を開けて豚こま肉があったら、今日は焼こうかな? 煮ようかな? 程度にざっくりと考えていることがほとんどです。レシピをたくさん覚えるのってすごく大変じゃないですか。だから、頭に詰め込みすぎない程度がちょうどいいんじゃないかなと私は思っていて。
料理が上手くなりたい、献立を増やしたいと考えている方は、まずはベーシックな料理を身につけるのがいいと思います。フランス料理でいうと、煮込み料理のベースが身につけば、あとはトマトで煮るのか、ワインで煮るのか、クリームで仕上げるのか、ちょっとしたアレンジでまったく違う一品が作れます。基本の料理をしっかり自分のものにする。これだけでも、献立の幅はぐんと広がるはずです」

【ポテトサラダ】大人用も子ども用も途中まで工程は一緒。味付けのアレンジで全然違う一品に。
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アレンジができるようになると、レシピと違うちょっとしたハプニングにも対応できるようになるので、足りない食材を買いに走ったり、想像と違う仕上がりに落胆したりということも減るそうです。

「私もよくあるんです。たとえばチンジャオロースを作ろうとした時に“あ! たけのこがない!”とか。でも、今日はどうしても子どもたちに中華を食べさせてあげたい。じゃあ、じゃがいもとかもやしとか、食感や色が似ているもので代用すればいいんじゃない? となります。調味料も、レシピに書いてあるからといって普段使わないものを買っても、その後は出番がないなんていうことも。中華ならニンニクや生姜を効かせるだけでもぐんと雰囲気が出ますし、野菜はサッと油通ししたり、しっかり水気を拭いたりするだけでも仕上がりの美味しさが増します。レシピの食材や作り方にこだわりすぎるとすごく大変になってしまうので、もっと肩の力を抜いて自由に料理するといいんじゃないかなと思います」