2020 GPシリーズ ロシア大会 女子FSにて。写真:Abaca/アフロ

ドラマティックな滑りで人々に感動をもたらすフィギュアスケート。この競技の最大の魅力は選手の個性が全面に出たスケーティングにありますが、同時にその言葉にも選手それぞれの生き様が垣間見えます。そんなフィギュアスケーターの言葉にフィーチャーする本コラム。

 

第4回目に登場するのは、2015年世界女王、エリザベータ・トゥクタミシェワ選手です。「リーザ」の愛称で知られ、日本でも人気の高いトゥクタミシェワ選手。その実力と気高きオーラゆえ「女帝」とも形容される彼女の言葉から、私たちがもっと自由に生きるためのヒントを探ります。

浮き沈みを経て、彼女はどんどん強くなる

年齢について常に何か言われるものです。どんな年でも、どんな見た目でも、あれこれと言われるものなんです。
(出典:TASS通信 2019年11月11日)

今、女子シングルは高難度ジャンプを次々と繰り出す10代のロシア女子が表彰台を独占しています。フィギュアスケートは、特に女子の場合、体重の軽い10代の方がジャンプは跳びやすく、女性らしい体つきになっていくほど、徐々にジャンプが思うように跳べなくなっていくのがセオリー。ロシアでは有望な若手が次々と現れ、平昌五輪金メダリストのザギトワ選手でさえ国内の代表争いに敗れ、今は一線から退いている状態。こうした選手の低年齢化・短命化を嘆き、シニアの年齢制限を引き上げる必要があるのではないかという議論が絶えず繰り広げられています。

そんな中、先日のロステレコム杯で23歳のトゥクタミシェワ選手が、17歳のコストルナヤ選手、16歳のトルソワ選手を破り、初優勝。今やトップ選手の中で最年長のトゥクタミシェワ選手が天才少女たちを退けた事実は、年齢問題で揺れる女子フィギュア界の一筋の光となりました。

2020 GPシリーズ ロシア大会 女子SPでの演技。写真:ロイター/アフロ

2020 GPシリーズ ロシア大会 女子FSでの演技。写真:AP/アフロ

思えば、トゥクタミシェワ選手ほど浮き沈みの激しい選手も珍しいかもしれません。そもそもこのトゥクタミシェワ選手こそが、今日のフィギュア大国・ロシアを築いた急先鋒。同年代のソトニコワ選手とともに、ソチ五輪金メダルを至上命題として強化された第一世代の選手です。その期待に応えるように、2011年、14歳でシニアデビューを飾ると、グランプリシリーズを2戦2勝。グランプリシリーズ史上初めてデビュー戦で優勝した女子選手となりました。

しかし、その後は徐々に成績が低迷し、ソチ五輪は代表落選。自らが苦境にあえぐ中、ライバル・ソトニコワ選手が金メダルを獲得するという、10代の女子にとっては過酷な試練を強いられました。

けれど、そんなことぐらいで折れたりしないのが、彼女の強さ。翌シーズンは、グランプリファイナル、欧州選手権と主要大会を次々と制覇。シーズンの締めくくりである世界選手権では自身初のトリプルアクセルに成功し、女王戴冠。昨シーズンの不調が嘘のような快進撃に、メディアはこぞって「復活」と称えました。

けれど、その後は再びスランプに苦しみ、二度目のチャンスだった平昌五輪も逃しました。すでに国内の覇権は、メドベージェワ選手、ザギトワ選手ら若い選手に移っており、もうトゥクタミシェワ選手が返り咲くことはないだろう。そうあきらめていた人もいたように思います。

そんな予想を裏切るように、2018年、4年ぶりにグランプリファイナルヘ進出すると、銅メダルを獲得。ソトニコワ選手はもちろん、年下だったリプニツカヤ選手、ラジオノワ選手、ポゴリラヤ選手らもすでに競技の世界から去っているにもかかわらず、トゥクタミシェワ選手は今なお現役の選手として戦い続けています。

2018 GPファイナル 女子SPでの演技。写真:YUTAKA/アフロスポーツ

20代前半ですでにベテラン、フィギュア大国ロシアの「女帝」が美しすぎる
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