考えられるみかんの害(3)皮膚が黄色くなる

皮膚が黄色くなるのは、高カロテン血症と呼ばれる状態によるものです。一般に、カロテンと呼ばれる黄色の成分を20~30mg以上毎日摂取し続けると、1ヵ月ほどして皮膚が黄色くなってくることが知られています(参考6)。みかん1個あたりカロテンは1mgとされていますので、みかんだけで20mgに到達するには、1日当たり20個ほど食べ続けなければいけないことになりますが、ニンジンを代表とする緑黄色野菜にも含まれる栄養素ですので、実際にはそれより少ない量で起こる可能性があります。

また、甲状腺の病気や肝臓の病気がある場合には、カロテンの代謝が悪くなり、より少ない量の摂取でも起こることが知られています(参考6)。

「皮膚が黄色いのは肝臓が悪くなったサイン」ということを知っていて、黄色い皮膚を心配されて病院を受診される方もいますが、みかんの食べすぎが原因の高カロテン血症であれば、健康への悪影響の心配はありません。また、みかんを減らせば皮膚の色は元に戻ります。

なお、肝臓が悪くなった時には、ビリルビンと呼ばれる別の色素が蓄積するのですが、見分け方のポイントは目の結膜です。結膜まで黄色ければビリルビンの可能性が高く、皮膚だけであればカロテンの可能性が高くなります。

ビリルビンが原因の場合には何らかの病気の可能性があり、病院での検査が必要とされるので、受診をしていただく必要があります。


考えられるみかんの害(4) 血糖値が高くなる、太る

みかん1個あたりのカロリーは約40kcalとされています(参考7)。1個だけならそれほどでもないのですが、こたつに入って気がついたら10個も、なんていうこともあるでしょう。すると、どんなに体に良いと言われるみかんでも、400kcalを一晩で余分にとってしまうことになります。

これはみなさんの夕食の総カロリーには及ばないかもしれませんが、例えばこれが糖尿病でカロリー制限をしている方ならば立派な1食分になってしまいます。「フルーツは健康に良いから糖質にはカウントされない」と誤解をされていることもありますが、フルーツから摂取されるカロリーも立派なカロリーであり、特に糖尿病がある方では注意をしなければいけません。

また、コタツみかんを続ければ太ってしまうことも容易に想像いただけるのではないでしょうか。     


考えられるみかんの害(5) カリウムが高くなる

そして、野菜や果物はカリウムを多く含みます。例えば、みかんならだいたい1個あたり150mgのカリウムを含んでいます(参考8)。これは医療の世界では、約2mEqという単位に直して考えます。

カリウムは通常血液の中では4~5mEq/Lという非常に狭い値の中で精密にコントロールされています。これが、例えば、6~7mEq/Lになっただけで体は心臓の不整脈のリスクに晒されることになります。このため、突然カリウムがたくさん体に入ってくると都合が悪いのです。

ただし、カリウムがたくさん入ってくると、あなたの腎臓が働いてより多くのカリウムを捨てるように適応してくれるので、通常、食べ過ぎだけが問題になることはあまりありません。しかし、腎臓に持病をお持ちの方は注意する必要があります。

また、腎臓の機能が正常でも、1日2.5Lのオレンジジュースを毎日3週間飲み続けて、カリウムが高くなりすぎ救急車で搬送されたという事例も過去に報告されています(参考9)。それだけ過剰にとり続ければ、いくら安全なみかんでも危険になりうるということです。

ここでは有害性ばかりを書き並べてしまいましたが、「みかんは百害あって一利なしだ」と言いたいわけではありません。これまでも述べてきた通り、これらの有害性は、一般的なみかん摂取で起こることはまず考えられません。

ただし、どんなに「安全」と言われているものでも、バランスを崩せば害になりうるということは知っておいても良いことです。食事と健康を考える場合、何かを過信して傾倒するのではなく、バランスよくいろんな物を食べるのが秘訣かもしれません。そして何よりあなたが大のみかん好きであれば、それを止める理由はほとんど何もないということを最後に付け加えておきたいと思います。

ニューヨークでのコロナウイルスとの戦いを乗り越え、日本に帰国できた際には、私もコタツみかんを実現したいと思います。

 

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参考文献

1    Burri BJ, La Frano MR, Zhu C. Absorption, metabolism, and functions of β-cryptoxanthin. Nutr Rev 2016. DOI:10.1093/nutrit/nuv064.
2    Liu C, Bronson RT, Russell RM, Wang XD. β-Cryptoxanthin supplementation prevents cigarette smoke-induced lung inflammation, oxidative damage, and squamous metaplasia in ferrets. Cancer Prev Res 2011. DOI:10.1158/1940-6207.CAPR-10-0384.
3    Dietary Reference Intakes for Vitamin C, Vitamin E, Selenium, and Carotenoids. 2000 DOI:10.17226/9810.
4    Cameron E, Campbell A. The orthomolecular treatment of cancer II. Clinical trial of high-dose ascorbic acid supplements in advanced human cancer. Chem Biol Interact 1974. DOI:10.1016/0009-2797(74)90019-2.
5    Massey LK, Liebman M, Kynast-Gales SA. Ascorbate increases human oxaluria and kidney stone risk. In: Journal of Nutrition. 2005. DOI:10.1093/jn/135.7.1673.
6    Priyadarshani AMB. Insights of hypercarotenaemia: A brief review. Clin. Nutr. ESPEN. 2018. DOI:10.1016/j.clnesp.2017.12.002.
7    みかんのカロリー | 西宇和みかん | ブランドみかん. https://nishiuwamikan.com/news/2019/08/no079/ (accessed Dec 27, 2020).
8    カリウムの多い順 一般果物. https://www.kudamononavi.com/eiyou/eiyouhyou/direction=desc/sort=potassium/level=1 (accessed Dec 27, 2020).
9    Javed RA, Marrero K, Rafique M, Khan MU, Jamarai D, Vieira J. Life-threatening hyperkalaemia developing following excessive ingestion of orange juice in a patient with baseline normal renal function. Singapore Med J 2007.

この記事は2021年1月2日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

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