40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。


これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。

これまでの話
女性誌のエディター・進藤早希は未婚独身のまままもなく40歳を迎える。10歳下のカメラマン・北山隼人に心惹かれるライバル登場で心折れ、仕事に邁進しようと誓った矢先、今度はモラハラ夫に悩む親友・美穂から屈辱的な言葉をかけられた
 

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「レスられ妻」の告白。セックスレスであることを隠し続けた理由スライダー1_1
「レスられ妻」の告白。セックスレスであることを隠し続けた理由スライダー1_2
「レスられ妻」の告白。セックスレスであることを隠し続けた理由スライダー1_3


「実は私……」美人妻が口にした衝撃のセリフ


――あれ、いつもと違う。

広尾のカフェに現れた絵梨香を見た瞬間、早希はそんな風に思った。

普段の彼女はドリス ヴァン ノッテンや青山のセレクトショップ、アデライデの服を着こなし隙のないオシャレを好む。メイクもいつだってバッチリだ。しかしこの日は珍しく髪も巻いていないし化粧も普段より薄い。

出社前に絵梨香の自宅がある広尾に立ち寄ったのは、もちろん美穂のことが気がかりだったから。絵梨香も早希の用件がわかっているので、ドリンクを頼み終えるとすぐに本題を切り出した。

「美穂に会いに行ってきた。直接話せて良かったわ」

「ありがとう」と頷きながら、情けなさがため息となって溢れる。

モラハラ夫から美穂を救おうと、早希が試みた説得は逆効果に終わっていた。彼女は完全に心を閉ざし一方的に電話を切った。どうしようもなくなって、早希は絵梨香にヘルプを求めたのだ。

「美穂、どうだった?」

「モラハラは確かだと思う、私も。ただ美穂自身が現実を認められてないから……もう少し時間が必要かな」

どうしようもない、という表情で絵梨香は首を振る。そのあと何かを考えるようにしばし黙り込むと、今度は噛み締めるように小さく呟いた。

「でもその気持ち、わかるの。私もずっと認められなかったから」

「え?」

何のことかわからず聞き返す。すると絵梨香は真顔のまま、渇いた声でこう言った。

「私、セックスレスなの。夫と。もうかなり前から」

【写真】アラフォー女性編集者の日常
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