40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。
これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。
早々に結婚し母となったものの、夫のモラハラに悩む美穂。一方、未婚独身で孤独な早希にときめく出来事が起こる。
***
40歳独身女が血迷った「韓流スター似の男」
外苑前にある通い慣れたスタジオに、いつも通りのフラッシュとシャッター音が響く。
その隙間を縫って馴染みのヘアメイク、ミーナが早希に耳打ちをした。
「ああ、やっぱ素敵。カッコ良すぎる。そう思いません?」
「……へ?誰のこと?」
予想はついているものの、早希は素知らぬふりで尋ねる。
「誰って、カメラマンの隼人さんに決まってるじゃないですか。ほら見てくださいよ、あの笑顔。韓流のチョン・ヘインくんにそっくり」
「……そう?」
盛り上がるミーナに冷めた回答をしたものの、内心では早希も彼女に完全同意だった。
ニューヨーク帰りのフリーカメラマン、北山隼人。
早希が担当する新企画『オンライン映えファッション』の撮影スタッフに加わった新顔で、30歳という若手ながら「腕がいい」と界隈で評判が立っている。
ミーナに気づかれぬよう、早希はこっそり隼人を盗み見た。
正統派の美男子ではないものの母性をくすぐるベビーフェイス。綺麗な肌、垂れた目尻と上がった口角。……確かに、チョン・ヘインに似ている。顔立ちとは裏腹に背が高く厚みのある身体つきも。
まさか視線に熱がこもっていただろうか。しばらく見つめていたら、不意にこちらを振り返った隼人とバッチリ目が合ってしまった。
心臓が跳ねる。すると次の瞬間、彼は躊躇もなく早希に甘い笑顔を向けてきた。
――な……なんなの、今の笑みは……!
いや別に、意味なんかないのだ。仕事仲間に対するただの会釈、社交辞令。当たり前じゃないか。
わかっているのに鼓動が止まらない。早希は慌てて視線をPCに戻すと、仕上がりデータの確認に意識を集中した。
【写真】10歳年下のイケメンにときめきを隠せない早希
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