③ 極端に投資金額の割合を増やしすぎない

 

西山:投資を始めて少し慣れてくると、「もっと増やそうかな」と、どんどん金額を増やす方もいます。

深野:その点は要注意ですね。自分が持っている金融資産を俯瞰してみてみて、「投資」が資産の内どれくらいの割合になっているか、バランスを見ることをおすすめしたいです。
投資の割合が高ければ、それだけリスクが高いですから。

40~50代の方なら、お金に余裕があれば、金融資産の半分程度が投資商品でもいいかもしれません。
でも、それはあくまでも「上限」としての目安です。投資初心者の方はそこまで増やす必要はないでしょう。

片岡:今はまったく投資をしていない人が「2021年こそ」と思っていたら、投資はどういうことに気を付けたらよいでしょうか。

深野:株価は現在強気な流れで、あと1、2年程度は上がる可能性もありますが、そう感じられるときこそ、実はまとまったお金で買うタイミングではありません。
みんなが「買いたい」と思っている時期こそ、冷静になる必要があります。買うとしても少額で、様子を見ながらというのがいいと思います。

「習うより慣れろ」という側面が大きいので、少額で慣れていってから、ある程度まとまったお金で投資す方法がいいのではないでしょうか。

基本的には、年齢を重ねれば重ねるほど、現役世代の時間が短くなるため、リスクをとれなくなります。投資の割合を減らしていったほうがいいですね。
40~50代の方が、今から10年ほどたったら、金融資産の中での投資商品の割合を1割くらい減らすイメージです。投資に自信がある方は別ですが、初心者の方は慎重に考えてみてください。

 


④ 保険で貯蓄はしない


西山:お金のご相談をたくさん受けていらっしゃる深野さんが、特に40~50代の方の出費で気になるところは、どちらでしょうか。

深野:最近多いのが、よくわからないまま保険にたくさん入っている方ですね。「保険で貯蓄をしよう」と思って加入したものの、その保険料が家計の負担になっているケースが多いです。

今は超低金利で、金利がやや高めに設定されている外貨建ての保険でもなかなか増えにくいので、日本円での貯蓄性保険は、なおさら難しい時期です。

そういう時期は、貯蓄と保障を分けて考えるのがおすすめです。
「保障」が欲しい方は、保険料の安い定期保険(保障が一定期間定められている保険)や収入保障保険(お給料を受け取るように、亡くなった方が存命していた場合の一定年齢まで、毎月保険金が出るタイプの保険。年々保障額が減る分、月々の保険料が抑えられる効果がある)などの掛け捨てのものがいいでしょう。

必要な時期と保障に絞って加入すれば、月々の保険料負担も抑えられます。定期保険に入っている方も、必要保障額が減ってきたら、減額するのも一つの方法ですね。

西山:保障については、例えば、家のセキュリティシステムに入る人と、入らない人とがいるように、「我が家にとって、この保障が必要かどうか」は、しっかり考える必要がありますね。

深野:その通りですね。自動車保険がいい例だと思うのですが、車に乗らなくなったら自動車保険が不要になるのと同じで、生命保険も「自分が亡くなった際に、経済的に困る人がいるかどうか」で考えるといいと思います。
社会保障や貯蓄などでカバーできないと考えたら、必要な分だけ保険に入るという考え方です。

片岡:自分の病気やケガなどが不安だという方は、どのように考えたらいいでしょうか。

深野:病気やケガが不安で、さらに貯蓄も少ないという方は、必要最低限の医療保険が選択肢ですね。
とはいえ、高額療養費制度(保険適用の医療費なら、支払額が1か月あたりの自己負担額が10万円程度まで、など上限がある制度)もあるので、それほど大きな保障は必要ないと思います。

医療費には「かかる医療費」と「かける医療費」の2つがあります。「かかる医療費」とは、例えば胃がんになったとして、通常の治療をする分には、健康保険が使えて窓口は3割の負担ですし、先ほどの高額療養費制度が使えるので、自己負担額はそれほど大きくありません。

一方で、「胃がんの名医に執刀してもらいたい」「保険適用外の治療をしたい」「入院したら、必ず個室がいい」などと思う方は、費用がかかります。つまり、「かかる医療費」がどんどん上がりますよね。

片岡:自分がどこまで「かけたいか」を考える必要があるのですね。

深野:はい、そうですね。ただし、大企業に勤めている方は、「1か月の自己負担額は上限2万円」といった具合に、会社の健保組合が手厚い保障をしてくれるケースがあるので、ぜひ確認しておきましょう。
もし1か月の自己負担額が2万円で済むのなら、医療保険は不要だという判断もできます。

実は私自身は、医療保険を15年ほど前にやめてしまいました。その後特に問題は感じていません。上手に保険に入れば、4人家族でも、1か月あたり1万円程度に抑えることも可能です。

同じお金をかけるのなら、保険にお金をかけるよりも、健康維持のためにお金をかけるのも一案です。運動や栄養バランスなどにお金をかけている方も多いかと思いますが、それも大切なことですよね。

西山:在宅時間が増えてきた今こそ、保険について家族でじっくり見直したいですね。

深野:高収入の方ほど、お金に余裕があって貯蓄型保険を中心に、保険に多く入りすぎてしまいがちなので要注意です。できるだけ早く見直すことをおすすめしたいですね。

保険は入るのは簡単なのですが、やめるのがなかなか難しいもの。さらに貯蓄型保険の場合、お金が必要になって途中で引き出すと元本割れの可能性がありますし、解約することで、本来必要だったはずの保障がなくなってしまうというデメリットがあります。

最初から「貯蓄」と「保障」を分けておけば、必要なときにそれぞれ使えるので、合理的です。保険に入る際には、そのあたりも含めて、じっくり考えてから入ることをおすすめしたいですね。


深野康彦  Yasuhiko Fukano
ファイナンシャルプランナー(AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士)。FP業界歴30年超のベテランFPの一人。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。BSテレ東「日経プラス10」他、テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説にファンが多い。『55歳からはじめる 長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)等、著書多数。

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

 

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