【質問7】妊娠を考えているのですが、妊娠中はワクチンを接種することができますか?
残念ながら、妊娠中の方へ適用できるデータはまだほとんどありません。しかし、先に行われた臨床試験の中で後に妊娠がわかった人なども含まれていたため、今後どのような影響が出るかが解析されることになっています。
なお、人間のデータはないものの、ネズミでは胎児に影響がないことが確認されています(参考3)。また、現在使用されているmRNAワクチンは、数日で分解されてなくなっていくものであり、COVID-19を起こしたり、遺伝子に影響を与えたりするようなものではないため、胎児に影響を与える可能性は低いと考えられています。
加えて、妊娠中の方はCOVID-19を発症した際に重症化のリスクが高い可能性が指摘されており、重症化したCOVID-19によって母体、胎児ともに健康リスクに晒される可能性があることから(参考4)、米国では、妊娠中の方も接種して良いという方針になっています。実際に、周囲で妊娠中に接種している医療従事者もおり、「接種できて安心した」という声も聞かれています。
今後、妊産婦さんに焦点を当てた臨床研究も計画されており、詳細なデータが近い将来明らかになると思います。
日本での方針がどのようになるのかはまだ分かりませんが、米国と同様であれば、個人の選択に任されるということになるかもしれません。選択にあたっては、先に書いたように、ワクチンのリスクばかりに囚われず、新型コロナウイルスによるリスクも考え、両者を天秤にかけるのが大切です。
【質問8】子どもの接種についてはどうですか?
今のところ16歳以上への接種が計画されています。これは、「子どもへの接種が危険だから」というわけではありません。これまでの臨床試験ではお子さんが含まれておらず、まだデータがないからです。
今後、子どもを対象とした臨床試験も計画されており、安全性と有効性が確立されれば、子どもへの接種も開始となる可能性が十分あります。
特に、10代のお子さんでは成人と同様に感染を広げるリスクが指摘されているからです(参考5)。個人が命を奪われるリスクという点で言えば非常に低いものの、後遺症を患うリスクや、両親や祖父母の世代に感染を広げるリスクもあり、そういった世代にもワクチンを広げる必要性は高いと考えられています。
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参考文献
1 Castells MC, Phillips EJ. Maintaining Safety with SARS-CoV-2 Vaccines. N Engl J Med 2020; : NEJMra2035343.
2 Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med 2020; 383: 2603–15.
3 Vaccination Considerations for People who are Pregnant or Breastfeeding | CDC. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/pregnancy.html (accessed Jan 11, 2021).
4 LD Z, S E, P S, et al. Update: Characteristics of Symptomatic Women of Reproductive Age with Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Infection by Pregnancy Status - United States, January 22-October 3, 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020; 69. DOI:10.15585/MMWR.MM6944E3.
5 Park Y, Choe Y, Park O, et al. Contact Tracing during Coronavirus Disease Outbreak, South Korea, 2020. Emerg Infect Dis 2020. DOI:10.3201/EID2610.201315.
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