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渡辺ミキ社長が語る芸能マネジメントの面白み「二人三脚の紐が解ける時が一番つらい」

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反発されても、感謝されなくても
それでもマネジメントは私の天職


青木:ピリピリしていないと、自分を見失うというか、やっていけなかったということですよね。

渡辺:私が社長として接しているタレントさんたちは本当に優秀で、才能もあって、すごいなといつも思っています。でも、私は優秀な人間ではなかったということです。プロデューサーとしても、マネージャーとしても、選ばれないし呼んでもらえない。それなら自分で仕事を作るしかない。入社当時の経験から、そんな姿勢がすっかり身についてしまいました。

青木:現場でADさんみたいな動きをする偉い人って、社長くらいじゃないですか? カットがかかると「オッケー、良かったですよ〜!」みたいな感じで飛び出てきますよね(笑)。社長らしからぬ言動に周りが動揺するんですよ。「お前んとこの社長、どうなってるんだ?」ってよく言われますもん。

渡辺:タレントさんって誰かに評価してもらった方が、もっと良くなるはずでしょう?スタッフは忙しいから演者にかまっていられないし、現場でヒマなのは私だけだし、せっかくなら「良かったですよ〜!すごく〜!」って全員に言いたいじゃない。でも、みんなを戸惑わせているなら反省せねば……。

青木:いえ、反省されなくて大丈夫ですし、今までの話を聞いて、社長がなぜそんなことをするのか腑に落ちました。むしろ、時代が社長に追いついてきた感すらします。

渡辺:要は、演劇部上がりなのよ。そこでやれる人がやればいいよね、っていうのが根っこにあるからね。通りすがりの人だと思ってくれればいいんだけど。

 

青木:通りすがりの人……には残念ながら見えないですけどね(笑)。でも社長って、本当にたくさんのタレントに熱を分けていらっしゃいますよね。この前、イモトアヤコさんともそんな話をしました。とはいえ、他人の人生に伴走することってすごく苦しい作業じゃないですか?

 

渡辺:マネジメントの仕事は、苦しいとはちょっと違うかな。ただ、消耗する時はありますよね。タレントたちも、歳も経験も重ねると「この仕事はやりたくない!」とか、意識の持ちようが変わってきたりするわけです。女性は特に、この企画の“45歳オワコン”の手前にも、20歳頃、29歳頃にも葛藤が多いわけじゃないですか。私は伴走はしているけれど、一緒にもがき苦しめるわけじゃないから。溝がどんどん深くなっていって、二人三脚の紐がほどける時が一番つらいですね。

青木:私も、自分がきちんと走れていなかったがゆえに、社長の伴走がきつくて、それが社長への、会社への反発につながった時期もありました。私の中の可能性や進むべき道について、私以上にわかってくれていたのは社長ではあったのです。

 

渡辺:今ここで辞めさせてしまったら、その人が一気にダメになってしまうということは私の経験上わかっているから、喧嘩してでも説得したりするわけです。ただ、説得が功を奏してハッピーな結末を迎えても、漫画のように「ありがとう社長、あなたのおかげです!」にはならないですけどね(笑)。