米国在住でワクチン接種経験者でもある山田悠史医師が、高齢の母親を介護している方からの質問におこたえします。

 

関連記事
【ワクチンの不安まとめ】持病がある人や高齢者は?医師の回答>>

 

山田悠史先生に書いてほしい、テーマや質問を募集します。
山田悠史先生ご本人が読んで、回答します!

山田悠史先生へ、テーマのリクエスト・質問はこちら>>

【質問】
89歳の母が介護療養型施設にいます。基礎疾患があり、多数の薬を服用しています。コロナワクチンを接種したほうがよいのでしょうか。接種をしてもしなくてもリスクがありますが、先生の考えを聞かせてください。 


基礎疾患を複数抱えていたり、多数の薬を飲まれたりしている状況で、他の方以上にご心配も大きいかもしれません。

ここではまず、「リスク」について考えてみたいと思います。
 

自分にとって「リスクがある」とは何か


まず前提として、生きていく上で「リスクがないこと」という状態は存在しません。例えば、食料品の買い物に出かけるときにも、転んでけがをするリスクや事件、事故に巻き込まれるリスクを小さいながら抱えています。あるいは、タクシーを使うときには、交通事故に遭うリスクを抱えています。

しかし、そのリスクをはるかに上回るほど、食料品を買いに行くことが大切であるからこそ、人は買い物に出かけるのだと思います。買い物に行かなければ、自宅の食料品が枯渇してしまうという大きなリスクを抱えているからです。

このような例を挙げると馬鹿げていると思われるかもしれませんが、私たちは普段、このようなことは意識せず、「当たり前のこと」として生活をしていると思います。そもそも意識する必要すらないことだと思います。全てのリスクを考えていたら、気持ちが滅入ってしまいますよね。

しかし、これらの例で少し振り返っていただきたかったことは、あなたにとっての「リスクがある」とは何かということです。繰り返しになりますが、そもそもリスクのないことなどありません。「リスクがない」と私たちが考えていることは、そのリスクがただ意識されていないか、あるいは無視できるほど小さいかのどちらかです。
 

私たちの思考は偏っている?


まさに今回の新型コロナウイルス感染症は、様々なリスクを可視化してくれ、私たちにそのような思考トレーニングの機会を与えてくれているのだと思います。

思えばこれまで、劇場に行って、感染症を共有するリスクなど私自身も意識したことはありませんでした。しかし、リスクはこれまでも、今より小さいながらあったのです。これまでは、それが小さかったがために語る者もおらず、報道で取り上げられることもなく、意識されてこなかったのです。

あるいは密集した都会での生活しかりです。そこには大きな感染症蔓延のリスクが存在していたはずです。しかし、それを意識することはありませんでした。でも実際にはすでに存在しているリスクだったのです。それがこの新型コロナウイルスによって、大きくなり、報道され、「可視化」されました。

リスクを考える習慣のあまりない我々にとっては、「リスク」と耳にしただけで、その大きさに関係なく、恐ろしいことのように捉えられてしまいます。それが100万人に1人しか起こらないとても稀なリスクだったとしても、です。

このような私たちの思考の偏りには十分注意を払っておく必要があるでしょう。この偏りにより、判断を誤る可能性があるからです。

関連記事
【コロナワクチンの不安まとめ】接種経験者の山田悠史医師がとことん解説>>