写真:つのだよしお/アフロ

ネット上で「古文・漢文はオワコン」論が話題になっている最中に、自民党の大物政治家が「他山の石」を間違って使うという珍事が発生しました。わざと間違ったのか、そうでないのかは不明ですが、期せずして「古文・漢文オワコン論」に弾みをつけてしまった格好です。

 

ネット掲示板「2ちゃんねる」の創設者である「ひろゆき」こと西村博之氏は2021年2月19日、自身のツイッターで「古文・漢文は、センター試験以降、全く使わない人が多数なので、「お金の貯め方」「生活保護、失業保険等の社会保障の取り方」「宗教」「PCスキル」の教育と入れ替えたほうが良い派です」と発言。古文・漢文はすでにオワコンだと主張し、ネット上では賛否両論となりました。

以前、このコラムでは橋下徹氏の「三角関数なんて要らない」という発言を取り上げたことがありますが、今回のひろゆき氏の発言も、実生活に役立つ、いわゆる実学を重視した方がよいという点で、近い議論といってよいでしょう。

学校において、古典を含む純粋な学問を教えた方がよいのか、実学を教えた方がよいのかという話は常に議論の的となるのですが、今回の出来事にはちょっとした「おまけ」が付きました。それは自民党の二階俊博幹事長による「他山の石」発言です。

二階氏は3月23日の記者会見において、元法相で公職選挙法違反に問われている河井克行被告(自民党を離党)の裁判について、「党としても他山の石としてしっかり対応していかなくてはならない」と発言して大炎上となりました。

説明するまでもないと思いますが、「他山の石」というのは四書五経のひとつである「詩経」に出てくる故事で、「他人のどうしようもない言動も、自分を磨く助けになる」という意味です。よく使われることわざで言えば「人のフリ見てわがフリ直せ」に近い意味ということになるでしょうか。

この言葉は、少なくとも「他人」の行動から学ぶという意味ですから、「身内」にはあてはまりません。ところが、二階氏は、党の幹事長という立場でありながら、まるで他人事のように、自分が率いる組織にいた人物についてコメントしてしまったわけです。

同じ自民党員といっても、現実にはそれぞれが独立した政治家ですから、彼等のホンネでは他人事なのだと思います。しかしながら、政権与党として国家の運営を担っている党の責任者がこのような発言をすれば、国民の怒りを買うのは当然のことでしょう。

 
  • 1
  • 2