「一緒に食事をしていると楽しい」って、とても大事なことですよね。はじめはなんとも思っていなかった人でも、食の好みが似ていたり、食べるシチュエーションがツボだったりすると、その人のことをぐっと身近に感じるものです。モーニングで連載中の「焼いてるふたり」は、奥手すぎる二人が食を通じてお互いを知り、距離を近づけていく幸せいっぱいの物語。そして、「私も食べたい!」と食欲を刺激されまくりのグルメマンガでもあります。

焼いてるふたり』(1)ハナツカシオリ

「結婚したいけど、出会いがない」、ということでマッチングアプリに登録した30歳のエンジニア・福山健太。ある日、洒落たカフェでマッチングした女性を待っていたものの、「申し訳ありません 遅刻します」のメッセージが。このような連絡のあとすっぽかされた経験があった健太は、また今回か、諦め気分で店を後にします。

 

店を出たところで、ある女性に声をかけられる健太。その女性こそが、今日会うはずだった山口千尋で、本当に遅刻してしまって慌てて駆けつけたところでした。千尋が美人だったのと、「すっぽかされた」と思いきや本当に来てくれたことに動揺してしまった健太は、「別の店行きましょう」と、思わずいつも男友達と行くような焼肉屋に入ってしまいます。

 

がやがやした雰囲気に、炭火焼きの七輪からもうもうと立ち込める煙。「……初対面のかたと焼き肉に来るのは初めてです」とつぶやく千尋を見て、後悔する健太ですが、時すでに遅し。マッチングアプリの初回デートで、いきなりの失態か? と思いきや、この焼き肉がきっかけで、会話が始まります。

実は健太は火を使って肉を焼き、料理をするのが大好き。千尋が網の上の肉に箸を伸ばそうとすると、「それはもう少し育てましょう。そのほうが絶対うまいんで!」と声をかけます。でも、千尋に引かれてしまったのではないかと気落ちする健太。

 

本当は今来ているような庶民的な店のほうが、居心地がよくて好きなのに、初めてマッチした女性とのデートだからと、背伸びしてお洒落なカフェを予約していました。格好つけようとしてもうまくいかず、自分の好きな店で素の自分が出そうになると、相手に嫌われてしまうのではないかと気をもんでしまう。健太はそんな胸の内をぽろりと千尋に話してしまいます。一瞬気まずそうな雰囲気を破ったのは千尋で、食べごろになった肉をぱくり。「福山さんはそういったご趣味なだけあって、火加減がお上手なんですね…」とにっこり笑ってくれたのです。

その後、一緒に食事に行くようになる二人。これからもっと彼女のことを知っていきたいと浮かれていた健太に、会社で浜松への転勤が打診されます。

 

気落ちしすぎて千尋からのメッセージに返信できずにいた健太のもとに、千尋本人が現れます。カフェに行き、そこで健太は、転勤のことを千尋に話し、ようやく出会えた千尋のことをもっと知りたかったのに、もう終わりなんだと自分に言い聞かせるように、「山口さんとお会いするのも今日で最後です」と伝えます。ところが、千尋からは「私たち結婚しませんか?」という驚きの一言がかえってきたのです。

 

健太が焼き肉屋で、自分の素を見せると相手に嫌われるのではないかと気にしていたように、千尋もまた同じような気持ちでいました。というのも、千尋は美人で感情を表に出さないタイプであるがゆえに、「冷たそう」「隙がない」と言われ続けており、それを受け入れ続けていました。相手が持つ印象に合わせていたほうが千尋にとって楽だったからです。

でも、焼き肉屋で火加減を見ながら肉を上手に焼き、同じような心情を吐露してくれた健太に対して、自分もありのままの自分を知ってもらいたい、このままお別れしたくないと思ったというのです。転勤でお別れかと思いきや、一転して交際0日、遠距離、週末婚というまさかの展開に!

浜松に転勤した健太が、東京でデザイナーとして活躍する千尋と会えるのは週末のみ。そんな健太が住まいに選んだのは庭付きの一軒家でした。なぜマンションにしなかったかというと、ある夢があったから。

 

それは結婚したら妻と庭でバーベキューをすることでした。というわけで、早速、バーベキューコンロをセットして、昨晩から下味をつけておいたスペアリブを焼いて千尋に振る舞う健太。二人でしみじみと、好きな人と一緒に外で焼きたての肉を食べたり、ビールを飲んだりする幸せを噛み締めていました。

 

こうして二人の週末婚が始まることに。健太は異性との出会いに恵まれず、マッチングアプリで何度かすっぽかされたことがあったというものの、料理は得意だし、誠実だし、ものすごくいい人じゃないですか!! 千尋は自分の感情を表に出すのは苦手なようですが、健太と出会ってからは少しずつ自分の感情に素直になり、健太の作る料理を堪能します。じょじょに表情が和らぎ、喜怒哀楽もあらわになる千尋はとてもかわいらしく、健太がどんどん惚れていくのも当然かと。

作品に登場する料理の数々は、健太がわかりやすく解説してくれるので、どれも再現可能。火を見るのが大好きな健太は炭火で焼くことが多いのですが、コンロで調理することができそうです。メニューはやはり肉が多めですが、魚介類やパンケーキなど、焼きもの料理ならなんでもあり。

スピード婚ではありますが、肉を炭火でじっくりと焼くように、二人の関係もじっくりと少しずつ深まっていきます。その様子がとても初々しくて尊い! また、いろんな食材や自然に恵まれた浜松暮らし、というのもとても魅力的です。平日は東京で働いて、週末は料理上手の夫が待つ浜松で一緒に過ごすって最高すぎませんか? 2巻が3月23日に出たばかりで、二人の幸せを見守りつつ、自分も幸せな気持ちに浸れます。

焼いてるふたり』(2)ハナツカシオリ

1話無料公開をぜひチェック!
▼横にスワイプしてください▼

続きはコミックDAYSで!>>

 

『焼いてるふたり』
ハナツカシオリ 講談社

マッチングアプリで運命の出会いを果たした、健太と千尋。奥手すぎて最初の一歩を踏み出せずにいるふたりが、健太の浜松への転勤をきっかけに急進展。なんと…交際ゼロ日で結婚することに! お互いをよく知らないまま夫婦になったふたりは、毎週末のBBQでじっくり仲を深めていく――。じっくり育てるスローな週末新婚BBQライフ、始めます!