最近はコロナ禍で見かける機会は少なくなりましたが、外国人観光客を目にした時に「日本の良いところを知って好きになってほしい」と思ったことはありませんか? 楽しそうにはしゃぐ彼らの姿は、慌ただしい毎日を送る私たちの心を晴れやかにしてくれますが、その一方で涙を飲んでいる外国人が日本には大勢いることをご存じでしょうか?
外国人支援団体「編む夢企画」を主宰する織田朝日さんのコミックエッセイ『ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄"~』には、入国管理局(略称「入管」。現在は「出入国在留管理庁」に改称)の外国人収容施設における日本人職員の非人道的な行為が克明につづられています。
本書を読む上で念頭に置かなければいけないのは、一部の被収容者以外は犯罪者ではないということです。その意識で読み進めていくと、入管職員の理不尽さが際立ってくるでしょう。
グローバル化が進む現在、たまに海外旅行に出かける程度の人にとっても日本人の印象を貶める行為は看過できないのではないでしょうか? では早速、織田さんが告発する問題の数々を見ていきましょう。
本書の冒頭、織田さんはまるで刑務所のような外国人収容施設の実態を紹介しています。
外国人収容施設にはビザ(在留資格)不所持の外国人が収容されているのですが、織田さんは彼らを犯罪者とみなすのは見当違いであると指摘します。
「長く入管の面会活動をやっている筆者も、『不法入国で来日した』という話はほとんど聞かない。正規の観光ビザで入ってきて、何らかの理由で更新できずオーバーステイになってしまった人がほとんどだ。
高度成長期は、日本政府は外国人労働者にビザを発給せず、日本にいて働くことを黙認していた。ビザがなくても警察に捕まることはなかったのだ。外国人の存在は日本にとって非常に必要だった。彼らがいなければ日本の発展はなかったと言っても過言ではない。
ところが不景気になってくると、ビザがないことを理由に犯罪者扱いされ、急に追い出されるようになっていった。『ビザがない=犯罪者』という言い分は後づけなのだ」
では実際、被収容者たちはどのような思いで過ごしているのでしょう? 織田さんは目を覆いたくなる現実を何度も目の当たりにしてきました。
寝ても覚めても悪夢が続く生き地獄。精神的に追い込まれ「死」を選んでしまう被収容者も少なくないようです。
「心身ともに弱っていた1人の女性は、職員たちに毎日、口癖のように「殺してほしい」と訴えていた。そして2019年9月9日、部屋にあった電気ポットのコードで自殺を試みたが、多くの職員に制止されて未遂で終わった。その様子をビデオカメラで撮影している職員もいたという」
外国人収容施設には、迫害を受けて母国を追われた難民の方々も収容されています。難民条約を結んでいる日本への渡航は問題ないはずなのですが、実態は違うようです。
日本の難民受け入れ率は先進国の中で最下位。入管の審査がしっかりしていないことが一因といわれているようですが、織田さんはその説を裏付けるような難民の方の声を取り上げています。
「トルコにいると命の危険があり、生きるために日本へ来たのに……日本は入管施設に閉じ込めて、私を死にたい気持ちにさせた。自分だけじゃない。多くの人が難民として日本を頼ってきたのに、精神的拷問をしている。
入管は私たちのことを『ルール違反』と言うけれど、それは違う。日本のほうが世界の、国連の(難民受け入れの)ルールを守っていないのです。私たちは人間です」
©Asahi Oda
Comment