米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。
いくつになっても挑戦を続けられている方という印象の吉永小百合さん、私がお父さんのように慕っている大先輩、西田敏行さんをはじめ、豪華キャストが出演している『いのちの停車場』。
現役の医師の方が書いた小説を映画化した作品です。
吉永さんの役どころは東京の救急救命センターで活躍していた医師の白石咲和子。
ある出来事をきっかけに退職して、実家のある金沢で在宅医になるのですが、吉永さんから醸し出される第一線で働いてきた医師としてのたたずまいに、とても説得力がありました。
舞台となっている「まほろば診療所」の院長を西田敏行さん、訪問看護婦を広瀬すずさん、咲和子を追って東京からやって来た医大生を松坂桃李さんが演じています。
この診療所はまさに“いのちの停車場”。
咲和子は救命救急センターで命を救うことに懸命になってきたけれど、この診療所では患者さんひとりひとりの事情や考え方に合わせた治療が行われています。
在宅医療といっても患者さんの年齢は様々で、共通しているのは死と向き合っている人たちであるということ。
末期の肺がんを患った芸者、脳出血で寝たきりになった妻とその介護をする夫、小児がんを患う女の子と看病する母親、がんが再発した女流囲碁棋士、末期のすい臓がんを患う高級官僚――。
田中泯さんが演じる咲和子の父親が激痛に襲われる病を発症して、どうにかして痛みから逃れたいというシーンにも、いろいろな問いかけが含まれています。
いくつものエピソードを見ながら、この世に命を授かった誰しもが生と死に向き合い、受け止めていくしかないのだと感じました。
そして、死のそばにいる人たちの物語は、改めて生の尊さを教えてくれます。
死を描いた映画ですが、辛くて心が痛くなるだけではなく、最後まで温かい空気感があるんです。
キャストやスタッフのみなさんが、吉永さんと一緒にいい作品を撮りたいという思いを抱いているからこそ生まれる温かさなのかもしれません。
きっと吉永さんだけが作れる温かさがあるんだろうなと感じながら、気づけばハラハラと涙がこぼれていました。
観る人それぞれが自分の死生観に向き合える映画だと思います。
『いのちの停車場』
全国公開中
東京の救命救急センターで働いていた、医師・白石咲和子（吉永小百合）は、ある事件の責任をとって退職し、実家の金沢に帰郷する。
久々に再会した父（田中泯）と暮らし、「まほろば診療所」で在宅医として再出発をする咲和子。「まほろば」の院長の仙川徹（西田敏行）、訪問看護師の星野麻世（広瀬すず）、東京から咲和子を追いかけてきた医大卒業生の野呂聖二（松坂桃李）も加わり、治療が困難な患者たちと出会っていく中で、咲和子はその人らしい生き方を、患者やその家族とともに考えるようになってゆく。
その時、父が病に倒れる。どうすることもできない痛みに苦しむ父は、あることを咲和子に頼もうとしていた—。
出演：吉永小百合
松坂桃李、広瀬すず／石田ゆり子、田中 泯、西田敏行
監督：成島出
脚本：平松恵美子
原作：南杏子「いのちの停車場」（幻冬舎）
配給：東映
©2021「いのちの停車場」製作委員会 映画公式ＨＰ https://teisha-ba.jp/
構成／片岡千晶（編集部）
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