フードロスを現在の0.2%から0%に近づけるのが目標


髙島:フードロスというのは、畑と我々みたいな販売業者、そして家庭の3か所で起きているように思うんです。ただ、わが社の場合、業者としては食品ロスが非常に少ない方であると自負しています。というのも、一般のスーパーマーケットがだいたい5-10%くらいを廃棄しているところを、僕らは0.2%に抑えていますから。しかしそれもいずれ半分にしたいと思っています。また、フードロスに貢献していると思う取り組みの一つはやはりミールキットですね。それ以外に余計なものを買わなくてもいいので、ご家庭でのフードロスが1/3程度になるようです。

また、畑で出るロスについても工夫をしています。たとえば天候がいいと突然大量にできるナスやトマトなど。そのまま売るにはどうしても限界がありますが、ミールキットに入れることで、従来は畑で捨てていたものを全て使い切ることができるのです。ですから、生産者の方にはとにかく『余ったものをすべて送ってください』とお願いして、我々のほうで売っていけるように努力をしていく。そうして今後さらに、作る・売る・食べる、それぞれの場所でのフードロスを徹底的に減らしていきたいと思っています。

Oisixでは会員制の定期宅配というビジネスモデルを活かし、販売量の計画に基づき、畑に種を植える作付けの段階から生産者と契約し、フードロスを少なくしています。一般の市場を経由して出回る野菜は規格が決まっていますが、Oisixのミールキット「Kit Oisix」で使用する野菜は加工するためサイズの基準を設けています。またKit Oisixは調理に必要な材料が必要な分量だけ入っているので、食材を余らせて腐らせることが少なく、家庭での食品の廃棄量を1/3に削減できるというデータもある。
※調査時期:2019年6月24日~30日 調査対象:58人(Kit Oisix利用者) Kit Oisixを利用していない時は平均廃棄量119g、Kit Oisix利用している時は平均廃棄量42gと回答


杉山食料の廃棄率が0.2%というのは本当に少ないですね。

髙島:はい。かなり少ない方だと思います。いま私たちが提携している農家さんは4000軒強あり、定期購入してくださっているお客様は30万人以上いらっしゃいます。我々はその30万人のお客様が「何を好きか」、「買うもの買わないものは何か」ということに加え、農家さんたちの余剰や不足などの生育情報をリサーチし、アルゴリズムによって毎週マッチングさせているのです。その結果、フードロスを大幅に削減することができているのですが、これはおそらく世界でもわが社しかやっていない取り組みだと思います。

オイシックスの提携農家は4000件以上。たとえば白菜も写真のように、大きすぎて規格の問題で一般市場には出ず、廃棄されがちなサイズであってもミールキットに入れて使用。食品ロスを限りなくゼロに近づけるための取り組みが続いている。

杉山御社がそこまでフードロス対策をされているとは知らずに驚きました。日本では、年間で約2531万トンの食品廃棄物が生じているのですが、そのうちまだ食べられるのに捨てられるフードロスは約600万トン(平成30年度推計値/農林水産省調べ)。そしてこれは、世界中で飢餓に苦しむ方々への食糧援助量の約1.5倍に相当するというのです。つまり、日本のフードロスを貧困者のところにまわしていけば、世界から飢餓がなくなるということではないか。そこで、私も微力ながらそうしたアンバランスを正す力になれないかと、昨年友人と二人でFOOD LOSS BANKという会社を立ち上げました。そして、ラルフローレンのイベントでのお土産やアルマーニリストランテでのメニューにフードロス食材を使うという提案をしたり、ブルガリ イル・チョコラートからは、ロス⾷材を使⽤したチョコレート「チョコレート・ジェムズ・フォー・サスティナビリティ」を今⽉発売しました。わが社のロゴも入っているダブルネームのチョコレートボックスです。今後はホテルとの取り組みなど徐々に活動を広げていっています。

FOOD LOSS BANKが協力し、6月17日にブルガリよりサステナブルなチョコレート“Chocolate Gems for Sustainability”が発売に。生産過程における無駄を減らし、伝統工芸の保護、また公正な取引で、生産者の生活向上まで考えられたカカオを使用しています。


髙島:ファッションとフードロスをつなげるという、いい活動ですよね。

杉山ありがとうございます。世界の貧困をなくそうというのは、とても大きい目標すぎて自分一人では何もできないと思いがちだけれど、まずは現状を知ること。そして、家で食べ残しをなくそうとか、小さくてもいいから何かアクションをしてみること。それが大きい目標に向けて踏み出す第一歩になると思うんです。

髙島:これから社会にとっていい影響を与えること以外は、どんどん格好悪いとされるような時代になっていくような気がします。そして、そういう会社やサービスしか必要とされなくなるし、生き残れなくなっていく。たとえばアメリカのエンジニアたちは、もう環境に悪い技術を扱っている会社には入りたくないと思っていますし、最近の日本の大学生たちも、社会や地球環境に貢献したいというような考え方や行動を皆がごく自然に行っているよう。もともと私たちもそういうことを指向しながら活動してきたつもりでしたが、これからはより恥ずかしげもなく青臭く、未来に生き残るであろうサービスを提供していくのが必要だなと痛感しています。

取材・文/河野真理子
 


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