婦人科のお医者さんが使っている日本女性の生理のデータは、1962年にアメリカの一地域で取られたデータでできているーー。そんな衝撃的な事実から知ることになるのが、細川モモさんの著書『生理で知っておくべきこと』です。細川さんは女性の健康をサポートし、現代女性の体の状態について研究を行なっていますが、多くの女性が悩まされている「生理」については、「日本女性の正しい生理はこれ」と示せるほどのデータが今も昔もなかったといいます。そんな中、細川さんは6年をかけて約2万人の日本人女性に「生理」「PMS(月経前症候群)」を中心とした調査を実施。最新のデータと研究結果を一冊の本にまとめました。

そこで今回は、大人世代が気になる「親子で知っておきたい生理」について、『生理で知っておくべきこと』著者の細川モモさんと、細川さんの活動に共感し、子育てメソッドの本も多数執筆する医学博士・臨床心理士の松村亜里さんの対談を実現。ざっくばらんに、さまざまな角度からお話を伺います。

 

細川モモさん
『生理で知っておくべきこと』著者。予防医療・栄養コンサルタント。一般社団法人ラブテリ代表理事。両親の闘病をきっかけに予防医学を志し、米国で栄養疫学と出会う。09年に日米の専門家チーム「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を発足。働く女性のための「まるのうち保健室」の立ち上げや、2万人を超えるデータをメディアや自治体、企業に提供することで女性の健康を支える社会環境づくりに取り組み、日本栄養士会「84セレクション」他、複数のアワードを受賞。生理用品No.1ブランド“ソフィ”の生理管理アプリを開発・監修。

 

松村亜里さん
ニューヨークライフバランス研究所代表。コロンビア大学大学院修士課程(臨床心理学)、秋田大学大学院医学系研究科博士課程(公衆衛生学)修了。医学博士・臨床心理士・認定ポジティブ心理学プラクティショナー。中卒で大検を取りニューヨークへ留学。アメリカと日本の大学で10年勤めた後再び家族の都合でニューヨークへ。幸せに生きることを科学的に研究する、ウェルビーイングとポジティブ心理学を広めている。ポジティブ心理学を人生に活かす「Ari's Academia」オンラインサロン、幸せな社会を作りたい専門家のための「Ari's Aademia for Professionals」を中心に活動中。著書に『世界に通用する子どもの育て方』『子どもの自己効力感を育む本』(いずれもWAVE出版)などがある。

 


娘の初経と母の更年期
家庭は“女性ホルモンの戦場”だった!?


――家庭で生理の話をすることは、いまだに“気まずい”という方も少なくないと思います。大人世代の「生理」にまつわる悩みとしては、どんなことをよく聞かれますか?

細川モモさん(以下、細川):日本女性の初経の平均年齢は10〜14歳と言われていますが、このくらいの年齢の娘さんを持つお母さんは、プレ更年期〜更年期にあたる年齢の方も多いですよね。だから、母娘ともに同じようなタイミングで女性として新たなステージに突入するわけです。お互いに女性ホルモンの影響を大きく受けるので、これまでの“1イライラ”が“100イライラ”に増幅されてしまう。思春期と更年期の衝突、女性ホルモンと女性ホルモンのぶつかり合いに悩むお母さんは多いですね。

 


松村亜里さん(以下、松村):まさに、私もそのひとりでした。もうすぐ13歳になる娘はちょうど初潮を迎えたばかり。一方の私は現在48歳で更年期のまっただなか。ママっ子だった娘は生理が来てから私を遠ざけるようになり、私は寂しさと更年期の影響ですごくイライラしてしまって、最近まですごく落ち込んでいたんです。

細川:『生理で知っておくべきこと』をまとめる中でわかったことは、子宮が発育過程にある10代は「生理痛が重い」「出血量が多い」など、心身への負荷が大きい傾向にあるということ。成長期で多くの栄養が消費されますし、鉄欠乏も起こしやすくなるので、イライラや倦怠感などのPMS症状も現れやすいと言えますね。

▼「生理痛」が「重い」と回答した年代別割合・10代…41.8% ・20代…37.7% ・30代…30.0% 
・40代…24.4% ・50代…27.0%
※「ソフィ」アプリ調べ/ユニ・チャーム(『生理で知っておくべきこと』より)
 

松村:母娘のホルモン戦争に限らず、実に幅広い世代が“女性ホルモンを乗りこなすのは難儀だな”と感じていますよね。心理学が専門の私は、大学で年間600件のカウンセリングを10年間行なってきましたが、その方法論を用いても自分のPMSを改善することはできませんでした。ニューヨークに移住した直後は特に、環境が変わったことも影響して子どもに怒ることが増えて。頭ではわかっていても制御できないんですよね。
 

次ページ▶︎ 生理で悩むのは女性だけじゃない?「男性」側の深刻な悩みとは

参考:「普通」生理って? 調査でわかった生理の平均
▼右にスワイプしてください▼

※2019年 20〜50代女性1000人に行ったアンケート/日経BP総研との共同調査(『生理で知っておくべきこと』P29から抜粋)