「“一億総中流社会”を一つの好ましい事実として誇っていた日本であったが、今や中間層が減少して、富裕層と貧困層の増加がめだつ“格差社会”に入った、との認識に合意のある時代となった」。経済学者の橘木俊詔さんは著書『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』の中でそう語ります。
本書が教えてくれるのは、統計データを紐解くことで炙り出された日本の今と、これから直面するであろう課題です。コロナ禍の不況で真っ先に解雇のターゲットとなった非正規労働者の実態、なかなか是正が進まない男女間の賃金差の現実など、今回は本書から特別に、数字が示す“格差社会・ニッポン”についてご紹介します。
女性の賃金は男性の75%。先進諸国における格差は2位
男女間の賃金格差について、日本は世界的に見てどのような位置にいるのでしょうか。本書では国際機関、OECD(経済協力開発機構)によるデータを用いて紹介しています。その中で注目すべきは、日本の順位。
▼主要先進国の男女間賃金格差(男=100)
日本において、男性の賃金を100とした場合、女性の賃金は75.5。これは、韓国の64.5という数値に次いでワースト2位、代表的な先進諸国のOECD平均は86.8なので、10ポイント以上の差があることになります。橘木さんは“細かい正確性には欠けるため、あくまで傾向に注目すべきデータ”としながらも、日本における男女間の賃金格差が埋まらない理由として次のように分析します。
「女性には企業で係長、課長、部長のように役職に就く人がとても少ないので、女性労働者の賃金は総じて低くなる。管理職は当然のことながらかなりの額の管理職手当を受けるので、高い賃金を男性管理職は受け取ることになる」
なぜ女性は管理職に就く人が少ないのかについては、「そもそも昇進の可能性を持ち合わせた女性の数が企業内でとても少ないからである。すなわち長期勤続の女性が少ない企業は女性を総合職と一般職に区分して採用しており、昇進のできる総合職女性は数が少ないことと、まだ女性差別の残っていることが響いている」と指摘。
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