フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

丁寧語を使っていれば、大抵のことは乗り切れる。と思いきや、そうは問屋が卸さないこともあるようで……。

以前、友人の友人が、好意を持ってくださっているとのことで、何度かメールでやり取りをしたことがあります。一度ちょっとお会いしたことがあるだけなので、丁寧語で。
「ではこの日に会いましょう」と決まりかけても、仕事の都合で流れるなどタイミングが合わず、結局そのまま自然消滅してしまいました。
「残念だけど、その程度の気持ちだったのかな」と思っていたのですが……。

半年か、1年か、過ぎたころ、友人から「相手の方が『振られた』と言っていた」と聞いてびっくり。狐につままれたような気分でした。
今思えば、伝聞だったので相手の本気度が分からず、私の言葉選びが必要以上に慎重だった気がします。大切な友人の大切な友人だから、失礼のないように……という敬意を込めての丁寧語だったのですが、相手は壁を感じてしまったのかも……。

やはり、会って話すのと、文字だけとでは、伝わり方が違いますね。
直接会っていれば、表情や声の調子などで、言葉以外からも気持ちやニュアンスや人柄が伝わりますが、文字だけだと、言葉がほぼ100%を占めてしまいます。
恋のチャンスを逃してしまった本当の理由は分かりませんが、一番思い当たる節は、言葉が丁寧すぎたのかも、慎重すぎたのかも、ということです。

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そういえば私の家族は、LINEでやり取りしている時にキレると、丁寧語を繰り出してきます。
家族に丁寧語で言われると、すごく嫌味な感じでムカッとするので、私も丁寧語で返信してしまいます。……血は争えません(笑)。

 

恋愛でも、家族の諍いでも、丁寧語は時に、壁を作ってしまうことがあるようです。
言葉は心の鏡だと思うのですが、同じ言葉でも、全く反対の作用をすることがあるから不思議です。もしかしたら、心の鏡だからこそ、言葉で取り繕おうとしても、心(本音)を映し出してしまうのかもしれません。

行き過ぎた丁寧語で慇懃無礼にならないように気をつけることはもちろん、必要以上に壁を作って出会いのチャンスを逃さないようにしなくては!


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