仕事でクタクタになって帰ってきた後、料理を作ったり、掃除をしたり、洗濯をしたり……、なんてやってられるか〜! 私にも「お嫁さん」がほしい!! と思ったことはありませんか? 汚部屋でも平気という人も中にはいるかもしれませんが、生きていれば独身だろうが既婚だろうが、家事は避けて通れません。Kissで連載中の「わたしのお嫁くん」主人公の速見はまさに家事が大の苦手。でもそんな彼女の前に救世主が現れて――。
営業4年目で、最近は仕事が楽しいという26歳の速見(ニックネームは、はやみん)。仕事ができて、取引先の評判も上々。社内では「アイドル」と称されるほどの見目麗しさです。現在はやみんが指導中の新入社員・山本君も、彼女に憧れる社員の一人。とはいえ、はやみん本人的には26歳でアイドルは申し訳なく、さらには会社の人には言えない秘密を抱えており、より一層の心苦しさを抱えています。それは家事が苦手なため、足の踏み場もないほどの汚部屋住まいだということ。料理もろくにできないため、菓子パンやお菓子、コンビニ弁当などで済ますような女性だったのです。
そんなある日、はやみんは帰宅後に、会社にUSBメモリを忘れたことに気づきます。はやみんは「明日でいいや」と菓子パンを食べようとしたところ、誰かがピンポーンと呼び鈴を鳴らします。ドアをあけると、そこにいたのは別の先輩に飲まされて泥酔状態の山本君。USBメモリを忘れて困っているだろうと思って、わざわざ届けにきてくれたのですが、山本君は憧れの先輩の家に来ることができてかなりのハイテンション。一方のはやみんは、散らかりまくった部屋を知られたくない! と焦ります。そんな時に、山本君がひとこと。「先輩の家、カビ臭くないですか?」
わー、隠しておきたかったことが、とうとう会社の人に知られてしまった……。山本君は酔いながらキレ、「ガッカリですよ みんなのアイドルはやみんがぁ」「何でも出来るタイプだと思ってたのに うわっなんでここに菓子パンが」などとものすごい勢いで片付けた上に、「こんなんばっか食ってたら倒れちゃいますよ!」とはやみんを気遣ってくれたのでした(ずっと酔っ払ったままですが)。
そんな山本君の手際の良さに感動したはやみんは思わず、「お嫁さんに欲しい……!!」と口走ってしまいますが、「あほか あんたはルンバとでも結婚しとけ!!」とキツい正論を投げ返されてしまいました。
翌日、会社ではやみんに土下座する山本君の姿がありました。実は山本君の母親も家事全般がダメダメで、3兄弟で全部やっていたため、女性にはちゃんとしてほしいと理想を押し付けるところがある、というのです。それでも、あの手際の良さに感動したはやみんは、「一家に一人」欲しい気持ちになっていました。思いがけず、自分が最も知られたくない部分を山本君に知られてしまい、恥ずかしそうに「ひみつにしてね?」とお願いするはやみん。こうして、山本君に弱みを握られてしまいました。
自分で家事を頑張ろうと心新たにするはやみんですが、家に「G」が出てきてしまい、「Gが出る前に片付けろって言ったじゃないすか」と怒られながらも山本君に退治してもらう始末。そうこうしているうちに、昼間ははやみんが山本君の仕事をフォローし、夜はそのお礼にと山本君が夕飯を作りにきてくれ、ということを繰り返しているうちに、はやみんは山本君と過ごすひとときに居心地の良さを感じるように……。
そしてはやみんは山本君に、「一緒に住まない?」と持ちかけるのでした。ただし「嫁として!」。
週3くらいでうちに来て掃除や料理をしてくれて、しかも一緒にいると心地が良い! ということで同居を申し出たはやみんですが、一方の山本君は、実ははやみんに好意を寄せています。なのに、はやみんは家事を完璧にこなす山本君のことを、現時点では完全に便利で快適な「お嫁さん」としてしか見ていません。山本君もそのことは自覚していて、お嫁さんのポジションを徹底的に利用してはやみんの懐に入り込む作戦を練っています。
一緒に暮らし始めてみたものの、山本君のはやみんへの淡い恋心は全く気付いてもらえずにいます。はやみんははやみんで、大事な「お嫁さん」なのだから、もし山本君に好きな人ができたらそれを尊重しなきゃいけないし、などと悩んでいたのでした。それが、いつしか家事の即戦力として手放せないという理由だけでなく、はやみんの山本君への気持ちの変化も現れて……。
いやー、掃除、洗濯、料理が完璧で、自分のことを好いてくれる真面目な青年がいたら最高じゃないですか! 山本君、まじでうちにも来て! なんて妄想しつつ、同僚以上恋人未満の凸凹なふたりである、はやみんと山本君の行方にヤキモキできる、一粒で二度美味しいラブコメディです。仕事が全然できないわけじゃなさそうだけど、かといって仕事第一ではなく、家事が得意で思いやりの心に満ちている男子って今どきの理想の恋人像なのかも。
また、二人のドタバタな暮らしぶりを追うにつれ、男女の役割分担のあり方や、相手を思いやる気持ち、二人がいつも心地よくいられるにはどうしたらいいか、といったことも前向きに考えてみたくなります。山本君みたいに家事を好きになるにはどうしたらいいのか。山本君、教えてください!
『わたしのお嫁くん』
柴なつみ 講談社
会社でテキパキと仕事をこなすはやみんには”家事ができない”という致命的な秘密があった。汚部屋暮らしが後輩男子・山本君にバレてしまい、山本君はすぐにでも嫁に行ける家事力を発揮してはやみんを助けてくれて……?
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