ノーモア壁ドン勢が求める安心と信頼の菅波先生

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写真提供:NHK

この10年余り、壁ドン、顎クイ、頭ポンポンなど様々な少女漫画しぐさがブームになりました。しかし、まあ、そういったカルチャーを薄目で見ながらこうも思うわけです。

……え? そんな気安くさわられたくない、と。

 

もちろん壁ドンや顎クイが好きな人はそれでいいんです。否定するつもりは爪の先ほどもありません。ただ一方で、全員が全員そういう強引なアプローチが好きなわけじゃないということも理解してほしい。

そんなノーモア壁ドン勢にとって、同意がないのにいきなり抱きしめたりキスしたりしない菅波先生の適切な距離感覚はめちゃくちゃ信頼が置ける。


菅波先生は、絶対「お前はオレのものだ」とか言わないし、「おもしれー女」とか言わない。他者を所有物扱いしないし、ちゃんと「女」じゃなくて「女性」と言ってくれる。角を曲がったら不当な差別や理不尽に出くわすこの社会で、いわゆる「マチズモ」からかけ離れた菅波先生に、どうしようもない安心感を覚えるのです。

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写真提供:NHK

こうした菅波先生的なキャラクターは、古い言葉では「草食男子」と分類されたかもしれません。とは言え、この単語自体、自分から積極的にアプローチできない男性を嘲笑するニュアンスも少なからずありました。それをアップデートしたのが、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の平匡さん(星野源)です。一見すると地味な平匡さんですが、物事を論理的に捉え、きちんとした倫理観のもとで適切なジャッジをくだす姿は従来の「男らしさ」とは違う頼もしさがありましたし、みくり(新垣結衣)をひとりの女性として尊重する姿勢は、奥手な男性を笑う旧来型の価値観を吹き飛ばす清新さがありました。

そこから約5年の歳月が流れ、平匡さんにあった「童貞をこじらせている」という要素を取り除き、より現代的にしたのが菅波先生。あらゆる他者を尊重し、相手を傷つけないように配慮を重ねる。そんな「ご配慮男子」に、今、めちゃくちゃ心が休まるのです。

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写真提供:NHK

もちろん俺様男子がいてもいいし、そうしたタイプを否定するつもりはありません。だけど、恋愛ドラマに登場する一番手の男性はもっと多様であっていいはず。たとえば、長らくスポーツ万能は少女漫画のヒーローの必須条件ですが、菅波先生のように飛んでくるものをキャッチするのが苦手な男性が素敵に描かれることもまた素晴らしいこと。多様性の時代だからこそ、男性の描かれ方ももっともっと多様になっていいと、菅波先生を見ながら思うのでした。
 

<作品紹介>
連続テレビ小説「おかえりモネ」

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写真提供:NHK

<地上デジタル>
毎週月曜~土曜、NHK総合にて午前8時~8時15分、再放送は12時45分〜13時
※土曜は一週間の振り返りを放送。再放送は毎週日曜、午前11時~11時15分
<BSプレミアム・BS4K>
毎週月曜~土曜、午前7時30分~7時45分、再放送は23時~23時15分毎週土曜、9時45分~11時、月〜金の5話分を一挙放送
※放送予定は変更される場合があります。最新情報は番組表をご確認ください。


構成/山崎 恵
この記事は2021年8月19日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

 

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