中国の若者たちの間で、競争を諦めて最低限の生活を目指す「寝そべり族」が流行しているそうです。米国では40歳までにリタイアして最低限の支出で暮らす「FIRE(Financial Independence Retire Early)」と呼ばれる運動が活発です。日本でも「親ガチャ」が話題になったことからも分かるように、諦めの価値観が拡大しているようですが、これらに関連性はあるのでしょうか。

 

「寝そべり族」とは、家を買わない、結婚しない、消費しない、などお金のかかることは徹底的に排除し、誰にも迷惑をかけず、最低限の暮らしを目指す若者を指す言葉です。競争があまりにも過酷であることから、一連のレースから距離を置き、質素に暮らしたいと考える人が増えていることが背景となっています。SNSでは、昼間から外で昼寝をしている様子をアップするなど、寝そべりライフをアピールする人が大勢います。

中国では都市部に生まれた人と農村に生まれた人では戸籍が違っており、都市戸籍と農村戸籍では社会保障などの水準が大きく異なります。つまり、どこに生まれたのかでそもそも格差が生じてしまうのが中国の現実といってよいでしょう。

一方で中国は教育に力を入れており、学力さえあればどこの出身でも大学に進学することができます。レベルの高い主要大学に進学できれば、著名企業の社員などエリートへの道が待っているのですが、中国の受験戦争は非常に過酷であり、多くの人が命懸けで勉強しているといっても過言ではありません。

最近では大学の数が増えすぎたこともあって、大学を出てもうまく就職できない若者が増えてきました。何とか著名企業に入っても、今度は会社の中で徹底的な出世競争を強いられます。中国の物価は上がる一方ですから、親が資産家でもなければ、マンションを買うこともままなりません。

どれだけ努力して良い成果を上げても、親が資産家だったり有力者でない限り、その努力が報われないことから、一部の能力のある若者は競争を諦め、質素な生活を目指しているわけです。

米国で広まっているFIREも似たような価値観といってよいでしょう。

 
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