8月、吉祥寺の芙葉亭の跡地に「ムレスナティー 東京」がオープンしました。衝撃的だった芙葉亭の閉店から一年以上経ってようやく入ってきた朗報に「あの建物がなくならずに済んだ」とほっとする反面、見慣れた芙葉亭の看板が変わってしまったことを寂しく思う人もいるでしょう。「住みたい街」ランキング常連の吉祥寺という街も、コロナ禍で少しずつ変化しているのです。
10月20日に1巻が発売された『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』は、マキヒロチさんの『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』の続編です。
前作と同じく、主人公は「住みたい街No.1」の吉祥寺にある「重田不動産」を営む太ましい双子の姉妹、都子(みやこ)と富子(とみこ)。
吉祥寺の不動産屋なのに、毎回、吉祥寺じゃない別の街の物件を紹介してしまう展開のオムニバスストーリーです。
本作は、葡萄屋の閉店を知った2人の姿からはじまります。
シャポー・ルージュ、芙葉亭、ずっとあり続けると思っていたお店がどんどん無くなっていくことにしょんぼりする都子(黒髪メガネの方)と、泣き出す富子(金髪ピアスの方)。
一方、場面は変わり、オシャレな夕飯を食べたい男子。
街中のお弁当屋さんで買ったハンバーグ弁当を食べながら、インスタの「映える」夕食を見ては叫んでいます。
オレも オシャレな夕飯 食いて〜〜
そんな彼が、重田不動産に訪れる。
まずは「なんで吉祥寺に住みたいの?」と都子&富子によるヒアリング。
外出自粛になり、リモートワークを続けるうちに
唯一の楽しみになるものが食べ物
になり、住んでいる街にはファミレス、弁当屋、コンビニしかない、ついでに気分転換に行けるような公園もないことに気づいたのでした。
井の頭公園があって緑も多そう、美味しそうなお店がひしめきあってるグルメな街、吉祥寺に住みたいと思ったんです!と熱く語る男性に2人は、
全っ然 わかってねーな
と、個人経営の店がどんどん潰れてチェーン店だらけになりつつある吉祥寺の現状を突きつける。
いや、チェーン店でも別に、と言いかける男子を煽る2人。
男ならワンランク上を目指せよ!
オンリーワンな店が集まる街にしろよ!
そして連れていかれたのは東京の東側、日本橋浜町。
緑の多い駅前を歩きつつ、HAMACHO HOTELをまずは紹介して、オシャレ夕飯食べたい男子のココロをつかむ!
その後も、浜町のオシャンティなスポットを続々と紹介する2人。ですが、そもそも彼は「オシャレ夕飯を食べたい」のでした。
とはいえ
やっぱりまだグルメの街!って感じじゃないですね
と言われると、2人は歩いて10分以内で上質グルメが集まる人形町に行けることを教える。
日本橋浜町は、日々の食を大事にしたい彼にはぴったりな街だったのです。
そして物件も彼のツボを押さえていて、実に魅力的。思わず言葉が出ます。
めっちゃ いい……!
なんか理想すぎて気持ちが追いつかない! オレ引っ越していいのかな? となぜか困りはじめる彼に2人がビシッと言う。
住みたいところに住む
それが引っ越しだろう?
『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』は、オシャレ夕飯食べたい男子だけでなく、双子の旧友で実家暮らしのサウナー・たけし、女好きでペットをこれから飼いたいと思っているチャラ男の飛田などが重田不動産に訪れ、大事にしたかったものに気づいていきます。
都子と富子は物件を紹介する時、まずは客と一緒に街を歩きまわって、食べて飲んで、「街を身体で味わう」ことをすすめています。各エピソードを読むと、それぞれの街に実際に訪れて、街全体に漂う空気を思いきり感じてみたくなるのです。
街だけでなく、物件も客のライフスタイルにピッタリ合うものを紹介する2人。客の「大事にしたいもの」をヒアリングでちゃんと聞き出しているからなんですよね。2人の雰囲気はゆるっとしてるけど、しっかり不動産屋としてプロの仕事をこなす⋯⋯!
第2話で登場する富子の旧友・たけしは、富子のことを「頭が良くて人を差別しない」から憧れて、好きだったと語ります。
一般的なイメージやネットのクチコミだけで「自分にはここが合うはず!」と決めつけず、実際に街を訪れて、散歩したり、気になるお店に入ってみたり、歩いている人たちを眺めたりと、「街を五感で味わってみる」のが、自分がグッとくる街や住まいを見つける秘訣なのかも。これって、街だけに限ったことではなく、人や会社にも通じることかもしれませんね。
【漫画】『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』第1話を試し読み!
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『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』
マキ ヒロチ (著)
住みたい街No.1の吉祥寺で不動産業を営む双子、都子と富子。双子は吉祥寺に憧れを抱いてやってくる女性客にフレンドリー&パンクな接客で、本当に住みたい街を紹介していく。「住みたい街No.1=吉祥寺」は間違い⁉︎ 街をぶらぶらして魅力を見つけるお引っ越しマンガ。
作者プロフィール
構成/大槻由実子
マキ ヒロチ
第46回小学館新人コミック大賞入選。ビッグコミックスピリッツにてデビュー。トリンドル玲奈主演でドラマ化された『いつかティファニーで朝食を』や『創太郎の出張ぼっちめし』(いずれも新潮社)などが代表作。「月刊ヤングマガジン」(講談社)で『スケッチー』、「コミックDAYS」(講談社)で『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』を連載中。