言いそびれた言の葉たち。いつしかそれは「優しい嘘」にかたちを変える。
 
そこにはきっと、彼女たちの「守りたいもの」がかくれているのだ。
 
これは、それぞれが抱いてきた秘密と、その解放の物語。

これまでの話
ひそかに妹と姪を養っている大黒柱の瑤子離婚したことを周囲に言いそびれたシングルマザーの有希おひとり様生活を満喫しつつも没イチで夫を忘れられない弘美の物語を紹介した。
そして今回は、世界で「二番目」に好きな人と結婚した蓮人の物語。
 


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第11話 商社マン・蓮人(38)の話【前編】

「人生で1番好きな相手」と結婚しないとダメ?37歳商社マンが抱えるふたつの罪悪感_img0
 

人生で一番好きな人と結婚した人って、どのくらいいるんだろう。

僕は会社帰り、駅のホームで、結婚式場の広告看板を見ながらふと考えた。

そりゃ結婚すると決めたときは、その相手が「その時点では一番好き」というのが普通だろう。

でも「それまでの人生で一番好きな人」「一番相性のいい人」と結婚した人の割合は、果たしてどのくらいなのか。

「一番じゃない人と結婚した」人は世の中にどのくらいいて、それはどのくらい残念なことなのだろうか。

一世一代、7年付き合った恋の相手との結婚がかなわなかった、僕のような男は。