愛する人への気持ちがうまく表現できなくて傷ついたり、周囲からの期待がプレッシャーとなって苦しんだり……大なり小なりこの手の「生きづらさ」を感じている人は多いと思いますが、それが原因でうつ、引きこもり、アルコールやギャンブル、買い物への依存、虐待、家庭内不和や暴力、仕事での人間関係への不適応、非行や犯罪というかたちで表れてしまったら「パーソナリティ障害」という障害を疑ったほうがいいかもしれません。
かつては性格の問題で克服するのは無理と考えられていたパーソナリティ障害ですが、近年は適切な方法で対処すれば先ほど挙げたような極端な行動が抑えられ、周囲の人とも良好な関係を築けるようになることが分かってきました。
その辺りの事情をクローズアップしたのが、コミック『マンガでわかるパーソナリティ障害 もっと楽に人とつながるためのヒント』です。本書にはさまざまなタイプのパーソナリティ障害の人が登場し、それぞれの苦しみや改善していく過程が漫画でわかりやすく描かれています。ですので、パーソナリティ障害が疑われる人はもちろん、そうでない人でも自分の「生きづらさ」を克服するヒントを本書から得られるかもしれません。今回は、代表的なタイプといわれる「境界性パーソナリティ障害」を描いたエピソードを抜粋してご紹介します!
ある日のこと。医師の岡田先生と臨床心理士のみぃこが常駐する心療内科「岡田クリニック」に、エイミという女子大生が父親に伴われてやってきます。彼女は些細なことで深く落ち込んでしまう性格で、そのたびに自傷行為を繰り返して父親を困らせていました。
そんな彼女に告げられた診断結果は「境界性パーソナリティ障害」。親や恋人などの「依存対象」から「見捨てられるかもしれない」という不安がどんどん強くなっていく障害でした。
境界性パーソナリティ障害の特徴は、依存対象の気を引くために極端な行動を取り、結果として相手を振り回してしまうところ。実際、エイミはつき合った男性に無茶な要求を突き付け、連絡を絶たれてしまったことがありました。
「無理しなくていいんだからね」と理解を示すことでエイミの心を開かせた岡田先生は、彼女に対して境界性パーソナリティ障害になってしまう要因を伝えます。
実はエイミの母親は精神的に幼いところがあり、エイミが込み入った話をしようとすると過剰反応するなど、彼女を真正面から受け止めることができない人でした。そのせいで、エイミは母親からの愛情を得られなかったと感じていたのです。
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©Takashi Okada, Mimiko Matsumoto 2021 Printed in Japan
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