境界性パーソナリティ障害の人が自分を見つめるために必要なことは、自分を客観視すること。岡田先生はその手段として、日々の出来事や感情を文字にすることをエイミに勧めます。
「頑張ります」と岡田先生の提案を受け入れたエイミは、しばらく経ってから再び岡田クリニックを訪れます。岡田先生の指示通りに日記をつけてはいるものの「どこまで我慢していいかわからない」「やっぱり心がつらくなる」と、正直な心境を吐露した彼女に対し、岡田先生は「50%で満足すること」とアドバイスするのでした。
不安交じりに聞いていたこれまでとは異なり、エイミは混じり気のない笑顔で岡田先生のアドバイスを受け入れるようになっていました。そんな彼女を見た岡田先生は、薬を処方することなく彼女の診察を終えます。
性格のほどよい偏りは、むしろ「個性」として大切なもの。それが苦しみになってしまうのは、あまりにも「極端」だったり「頑な」になってしまうから。偏りがあっても相手や状況に応じて柔軟に形を変えバランスを取ることができれば、それは「魅力」となる──岡田クリニックでパーソナリティ障害との上手なつき合い方を学んだエイミは、これまでにないくらい晴れやかな表情を浮かべるのでした。
『マンガでわかるパーソナリティ障害 もっと楽に人とつながるためのヒント』
著者:岡田尊司/松本耳子 光文社 1320円(税別)
「境界性」「自己愛性」「妄想性」「回避性」「演技性」「反社会性」「失調型(スキゾタイバル)」「シゾイド(統合失調質)」「依存性」「強迫性」とさまざまなタイプがあり、現代人の生きづらさや悩み、不安の背景にあるといわれる「パーソナリティ障害」。その正しい知識や克服法、さらに人を輝かせる「個性」へと変えるコツを、漫画でわかりやすく伝えます。
構成/さくま健太
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著者プロフィール
【監修】岡田尊司(おかだ たかし)さん:1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院にて研究に従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで困難な課題を抱えた若者に向き合う。現在、岡田クリニック院長。日本心理教育センター顧問。『愛着障害』『回避性愛着障害』『愛着障害の克服』『死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威』(すべて光文社新書)、『マンガでわかる愛着障害 自分を知り、幸せになるためのレッスン』(光文社)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『発達障害と呼ばないで』(幻冬舎新書)、『母という病』『父という病』(いずれもポプラ新書)など著書多数。小笠原慧のペンネームで小説家としても活動している。
【漫画】松本耳子(まつもと みみこ)さん:1976年大阪府生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業。1998年、大学在学中に漫画家デビュー。漫画雑誌の連載や実話系4コマなどで活躍しつつ、毒親に育てられた壮絶な体験を明るく描いたコミックエッセイも執筆。著書に『毒親育ち』(扶桑社)、『毒親こじらせ家族』(竹書房)などがある。1男1女の母親。