自宅や買い物先では普通に過ごせるのに、会社に行くと不安や恐怖、緊張からできるはずのことができなくなってしまう──心当たりのある方、もしかしたらそれは「適応障害」の症状かもしれません。
適応障害は皇太子妃時代の皇后雅子さまや女優の深田恭子さんが発症したことでも注目されましたが、よく知られている「うつ病」とは似て非なるもので異なる対処をしなければならないようです。ちなみに、この適応障害の原因となっているのが「とらわれ」とのこと。とらわれはネガティブな感情に心が支配され、それがどんどん増幅していく状態のことですが、精神科医の勝久寿さんは著書『「とらわれ」「適応障害」から自由になる本 ―不透明な時代の心の守り方』において、Webメディアが普及し、コロナ禍で他者との接触が制限されている現代は、とらわれや適応障害を生みやすい状況にあると警鐘を鳴らしています。
本書では予防法・治療法なども詳しく記述されていますが、今回はとらわれおよび適応障害の基礎知識や発症しやすい人の傾向などに触れた部分を抜粋してご紹介します。
都合のいい情報だけを選べるネット社会が「とらわれ」を生む
心がとらわれてしまう原因のひとつに、自分以外のこと、つまり外の世界が「不透明」になっていることがあります。外側の世界が見えにくくなると、自然に意識は心の内側に向きやすくなります。意識が内側に向かうほど、意識はひとつのことに集中していき、結果、「とらわれ」という心理状態が生まれるのです。
「確証バイアス」といって、人は自分の考えを支持したり、都合のいい情報ばかりを無意識に集めてしまい、一方で自分の考えに反対したり、不都合な情報は、無視したり集めようとしなかったりする傾向があります。そのため、ツイッターでも価値観の近い人をフォローすることが多く、異なる価値観に触れにくくなります。ネット社会というのは、便利な反面、自分の考えが凝り固まって、とらわれやすい状態をつくります。今の世の中、「生きにくさ」を感じている人が少なくないのは、社会全体がとらわれやすい状況にあることも大きいのではないかと思います。
とらわれが手ごわいのは、そうして知らず知らずのうちに心がとらわれの状態に陥ってしまうと、そのことから逃れられなくなり、不安や抑うつがどんどん増幅して心が疲弊してしまうからです。その結果、さまざまな精神疾患へとつながっていくこともあります。
1 不安や抑うつ、あるいは動悸、震えなど心身の症状が増大し、苦痛が強くなる
2 ストレスを回避することによって問題を解決できず、ストレス耐性も高まらない
3 ひとつの事柄(体験)に執着することによって、ほかのことに対して本来の能力が発揮できなくなる
4 問題に対処するための自分が本来持っている資源(能力やスキル、周囲のサポートなど)に注意が向かず利用できない
5 自分自身を正しく認識できず、考えが偏ったり、思い込みが強くなる
6 客観的事実を認識することができず、主観的な思い込みを修正することができない
7 まわりの状況を正しく認識できず共感能力が低下して自己中心的となり、周囲と調和した行動がとれなくなる
【参考】「とらわれ」のチェックリストとストレスを感じる人の割合
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