あなたには「推し」はいますか? アイドルはもちろん、トークショーなどその人に会える機会があるならいくら出しても構わない! と思える相手。その人がやっていることを無条件に応援したいと感じる相手。
いやいや、「推し」なんていないよ、という人も、オタクの精神が少し理解できるかも。そんな作品『推しが武道館いってくれたら死ぬ』は「彼女のすべてを応援したい」と推しを強く想うオタク女子が主人公です。

ここは岡山県。マイナー女性アイドルグループ「ChamJam」を応援するオタクたちが会場近くのカフェで、彼女たちのライブ待ちをしている。
圧倒的に男性が多い中、ひときわ目立つ「伝説のオタ女」がいました。「えりぴよ」と呼ばれる20歳の女性です。

「私の推しは内気でシャイ」人気最下位メンバーを応援する伝説のオタク女子『推しが武道館いってくれたら死ぬ』_img1

 

古参にして、「ChamJam」の人気最下位メンバー・舞菜(まいな)の唯一のオタ。推しに収入のほとんどを費やしているため、いつも高校時代の指定赤ジャージを着ている異様な姿に、新規オタは恐れをなすという。
他の古参オタと、どっちの推しが一番かについて日々言い争ったりしています(もちろん自分の推しが一番だと譲らない)。

 

えりぴよは、舞菜の握手券を全部買い占めたり、ライブの整理券はいつも1番2番をゲットして必死に「推し」ているのに、舞菜に「塩対応」をされている(避けられている)ような気がしてなりません。

けれど、握手会で他のオタクがえりぴよがいない時、こっそり舞菜の列に並んでみたら「神対応」だったという。

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私のせいで 舞菜のオタが増えないみたいじゃん!

推しへの愛がアツすぎて、オタ仲間を寄せつけづらい空気を出しまくっているえりぴよ。
ライブ会場で話をするのは、同じ古参オタのメガネぽっちゃり男子「くまさ」さんくらい。

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ライブがはじまり、「舞菜!今日も無事にステージに立ててるね!」と心が沸き立つも、えりぴよの「推し」舞菜は後方列。
オープニングの口上(メンバーが自己紹介する)の時にすでに、他メン(他のメンバー)に隠れてなかなか見えない。

もっと前に もっと前に出てきてよ 舞菜
2年前からずっと見てるこの距離は遠い

そうしたらみんなも舞菜のかわいさに⋯

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内気でシャイな性格の舞菜は、自分の魅力をぐいぐいアピールすることができません。クール系、天使系、おっとり、ちっちゃい、セクシー、などキャラのたった他メンに比べ、オタからすると「キャラがぼやけてる」状態。

口上が回ってきても、ちょっと恥ずかしげで⋯⋯

えりぴよが突然叫んだ!!

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叫ぶと同時に鼻血を出してしまったえりぴよ。
血まみれで会場から退出する姿を多くのオタに見られ、さらに「伝説の人物」と化したのでした。

物販スタッフに介抱されるえりぴよが気がかりだったこととは? 舞菜は、自分の唯一のオタであるえりぴよをどう思っているのか? この続きは試し読みで読んでみてくださいね。

そして、2話以降では、ドルオタの精神がわかります。

新曲の発売日、新しい衣装でCD販売とチェキ撮影ができる特典会に、猛暑日の朝から並ぶオタクたち。
地下アイドルグループなので、めったに見られない新衣装をいち早く見るために耐えるが、オタクの一人が叫ぶ。

もうオレは限界だ⋯⋯!!

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新曲の衣装はCDジャケットで見られるのは重々承知しているが、チェキは、推しが自分のために遣った時間を保管できるものなのだ!! 今抜ければこれまで並んだ5時間(推しに対する気持ち)が無駄になる!! と力舌するくまささん。

そして、3話では推しがファッションショーに出るというので、場違いながらも岡山ガールズフェスタに応援に出向くえりぴよとくまささん。

自分の推しが出ていない場面でも、盛り上げるために叫ぶ! 周りの女子に「えっ、こわいんだけど」とひかれたとしても。

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オタクは推しと会っていない時でも、いつも、推しと、推しが出てくるステージの盛り上がりを考えているのです。自分より推しが優先。

オタクのピュアな精神を、オタク女子を主役にすることで女性にも理解しやすく描いた『推しが武道館いってくれたら死ぬ』は、12月13日に最新8巻が発売されます。

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推しが武道館いってくれたら死ぬ (8)』 (リュウコミックス)

えりぴよが抱く、一般的に人気がなくても彼女の魅力はわたしが知ってるからいいの、という「全面的な味方感」は、オタクだけに限らず、子どもへの思いやシスターフッドにも通じるかもしれません。それは、大きな愛、ビッグラブ!

本作で、オタクの持つ、推しが多くの人に推しが認められてほしい、という「ビッグラブ」の精神をたっぷりと感じてみてください!

 


【漫画】『推しが武道館いってくれたら死ぬ』第1話を試し読み!
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『推しが武道館いってくれたら死ぬ』
平尾アウリ (著)

岡山県のマイナー地下アイドルグループ「ChamJam」の内気で人見知りな人気最下位メンバー舞菜(まいな)を人生をかけて応援する伝説の女性オタ・えりぴよ。収入は推しに貢ぐので、自分はいつも高校時代の赤ジャージ。そんなえりぴよの全身全霊傾けたドルヲタ活動の日々!


作者プロフィール

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平尾アウリ
8月30日生まれ。岡山県倉敷市出身。2007年に第2回龍神賞<銀龍賞>を受賞。受賞作『まんがの作り方』がそのまま「COMICリュウ」で連載化され、コミックス全8巻の人気作品となる。
2015年~同誌で『推しが武道館いってくれたら死ぬ』を連載開始。2020年にテレビアニメ化され、大好評を博す。現在は【COMICリュウWEB】にて大人気連載中。
他のコミックスに短編集『4月1日』ほか多数。



構成/大槻由実子