コロナ禍で行ける場所があるというシアワセ
結局、300坪で400万円(!)という破格の古家付きの土地を紹介してもらい、即決で購入。しかもそこは、温泉付きで管理の行き届いた別荘地。ラッキーなことに、台風で雨漏りした箇所の修繕後に引き渡してもらったので家の状態も良く、直したのは水回りと玄関のドアぐらいでした。また、前の持ち主が状態の良い家具を残してくれたため、大物家具はほぼ買わず、冷蔵庫などもそのまま譲り受けたと言います。
「家自体は80平米ぐらいの横長の平屋で、リビングと和室が2つの2LDKです。広すぎると管理しきれないので、人が泊まれる適度な広さで森の中にあること、あとは予算をざっくり決めて探しました。結果的に信頼できる企業が管理する別荘地を選びましたが、やっぱり安心感がありますね。家の周辺にはイノシシや鹿が出るので、管理事務所に24時間人がいると思うだけで怖さも薄れますし、ゴミの心配もいりません。お金を払えば掃除や冬場の水道の水抜きもお願いできるので、二拠点には良かったと思います」
途中コロナで中断されたものの、2019年末に物件を探し始めて、2020年末には新たな拠点を契約できた一家。コロナ禍で、二拠点に対する想いにも変化が生まれました。
「うちはコロナ前から物件を探していましたが、途中から近距離の二拠点は正解だなと思いました。旅行できない日々が続いてずっと鎌倉にいると、それはそれで少し飽きてしまうというか。贅沢な悩みですが、平和ボケしてしまうんですよね。それまで平日は東京に通っていた友人も、リモートで鎌倉にいるようになって週末くらいは他の場所に行きたいとか、人の多い週末の鎌倉は少し息苦しいとか言っていて。そういう時に、県内で行ける場所があるというのはすごく良かったですね。ただ、娘は気軽に外に遊びに行ける鎌倉の方がいいみたい(笑)。移動が増えるので少し疲れもするようで……(笑)」
近距離二拠点だから、行動範囲が少しずれただけ
現在は、平日は鎌倉、週末はほぼ箱根に滞在するという生活を送る一家。車で約1時間と2つの拠点が近いため、平日も娘さんを保育園に預けたあとで箱根に向かい、ひと仕事して帰るという使い方もしています。
「平日に関しては、夫の方が行く頻度が高いですね。朝早く出て仕事前に芦ノ湖の周りを走ったり、集中して仕事ができているみたいですよ。それから高速代が片道260円と安いのもメリットの1つ。頻繁に行き来することを考えると、それもかなり重要ですよね。
我が家は二拠点を始めるまで、週末のどちらか1日を野菜や魚などの買い出しに充て、残りは自宅に人を招いてワイワイやるという過ごし方をしてきました。なので元の生活を犠牲にしてまで始めたという感覚はなくて。強いて言えば、土日は自宅を空けるので集中して掃除ができず、掃除が行き届かなくなったことぐらい。それから、300坪の家を持ったことで鎌倉の小さな庭が庭と思えなくなり、今や空き地と化しています(笑)」
狩野さんがそう話すように、一家の基本的な生活スタイルは変わりません。神奈川の三浦方面で調達していた食材を今度は箱根に行く道中の小田原や秦野で手に入れるようになり、山や川遊びも箱根を拠点に行くようになったぐらい。「2つの拠点が近いから、行動範囲の中心軸が少し西側方面にずれた程度で、そこは近距離二拠点のメリットかもしれません」と話します。
二拠点生活を送る上で出会うさまざまな景色
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次回は、狩野さんが二拠点生活を始めたことで得た“新たな視点”についてお届けします。
構成・取材・文/井手朋子
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