停滞するおしゃれ。やがて更年期に襲われて


チェリーさんが40代を迎えたのは1980年代半ばのこと。世はバブルの頂点に向かってひた走っていました。

「あの頃って、ファッションは肩パット全盛でスーツなのになぜか襟を立てて、若い子から年寄りまで化粧は濃い、ヘアスタイルといえばショートでもロングでも“前髪立つ子さん”。トラッドなんてものすごくダサいと思われた時代よね。私、80年代なんて大嫌い!」
相容れない流行との不運な巡り合わせが、チェリーさんをいっそう悩ませました。

 

「だけど流行だから着なくちゃいけない、いえ、やっぱり流行のものを着たいわけです。葛藤ね。自分のスタイルなんて、まだまだ手探りだったし。それに、今と違って街には流行のものしか売っていなかったから。アルマーニとかフェンディとか、似合わないなと思いながら着ていたわ。
似合わないというのは、自信をなくしていくことね。だから、40代は一番自分に自信がない時代でした。消し去ってしまいたいわ」

 

さらに50代が近づいた頃、「おしゃれ更年期」ならぬ、深刻な心身の不調が襲いかかります。
「まず人に会いたくない、電話が鳴っても出ない、人と話したくないから。買い物も車で行ってパパっと済ませるだけ。朝起きた格好のまま、気がついたら夜まで同じところに座っていたなんてこともありました」

「大変だったわね、私」あっけらかんと話すその笑顔からはとても想像できないけれど。
暗闇に迷い込んでしまったような欝々とした毎日に、やがてひと筋の光を差す救世主が現れます。