同窓会を楽しめる人は学生時代を満喫してた人


同窓会ってどんなイメージでしょうか。実はちょっと苦手……という人も多いかもしれません。波瑠さんもそんな風に考える人のようです。

「同窓会らしい経験は、成人式の時に中学時代の友達と集まったぐらい。その時も5年くらいしか時間が開いていなかったので、『懐かしい』とか『変わっててわからなかった』みたいな経験って味わったことがないんです。でも同窓会を楽しめるのって、たぶん学生時代を満喫していたからなんだろうなって。学生時代の私は今の言葉で言えば“陰キャ”という感じの子供で、友達がすっごく少なかったんです。今でも連絡を取ったり、たまに会ったりする相手って、中学時代の2人くらい。大人になれば『気が合うから友達になる、気が合わない人とはならない』って、ある程度は割り切れるじゃないですか。でもそのころの自分は、友達が少ないことは自分のダメさに直結していて。ちょっと怖いし。周りの子たちがうらやましかったし、そういうコンプレックスに耐えられなかったんですよね。だから部活動とか頑張ってた女の子たち、今でいうカーストの上のほうにいた子たちとは、あまり会いたくないです」

 

主人公の望緒が同窓会に期待したのは、「昔好きだった相手との久しぶりの再会」。それはそれで実現するのですが、まったくことなる事態も進行してゆきます。

物語の6人の登場人物たちの年齢は、仕事で私生活の大きな違いが現われてくる28歳。都会でバリバリと働く人、理想の結婚を手に入れた人、地元で自由な独身生活を送る人、夢を実現した人ーーそれぞれに鬱屈を抱える彼らは、表面的には取り繕いながら友人と自分を比べ、新たなカーストに苦しんでゆきます。通奏低音として響くのは「一人でいるくらいなら、嫌な子でも一緒にいたほうがいい」という、望緒の中学時代のつぶやきです。

「私はそれもできなかったですね。私は自分が『イヤだな』と思う相手とは距離を置いてしまうタイプだったので、そこがダメな部分だったなと思います。良い悪いはさておき、子供なのに自分の身の置き方を考えていた望緒ちゃんは、なんか頭がいいな、しっかりしてたんだなって思います」

 


今考えなくていいことは、積極的に後回しにしていきたい


ふと思うのは、そういう世界を引きずって大人になっている人も、多くいるのではないかということ。会社で、ママ友の世界で、「本当は好きじゃないし面倒だけど、一人でいると変に思われるから」。そんなつぶやきは私たちミモレ世代の日常的にもごろごろと転がっているように思います。

「私も根本的な答えを出して力強く生きてるわけじゃなく、人間関係の中ではいまだに、ぜんぜん悩みますよ。『上手くいかないな』とか『もっと器用にいろいろできたらいいのにな』とか。その瞬間には何かしらの答えを出すけれど、たぶん同じことで定期的に悩んでます。子供の頃に傷ついていたようなことで大人になっても傷つくし、苦手だなって思う瞬間って意外と変わってなかったりとかします。もちろんそういうものに耐えうるメンタルになりたい、そのために何か取り組みたいとは思っているのですが、結局はこれから先も迷いながらいく気がします。ただ、その時その時を元気に生きればいいんじゃないかとも思うんですよね。今考えなくていいことは、積極的に後回しにしていけば。心が落ち込むとそうは思えない時もありますけど、まあそれが人生かな」

 

演技のお仕事はどうにかしてやっとみつけた自分の居場所

 

お話を聞いていて波瑠さんから感じるのは、決して浮足立たない冷静さです。主演したNHK連続テレビ小説『あさが来た』が大ヒットした後、周囲の大騒ぎに惑わされず、主演女優として足元を固めていったのも、そんな彼女の冷静さの結果かもしれません。

「いろいろなことがいろいろに作用をして、結果的にそうなったんだと思うんです。私は自分にあまり自信がないほうで、『あさが来た』は本当にありがたいことに評価していただきましたけれど、『自分がやってやった!』と気持ちよく思えるまでには至れないんですよね。悩んだことばっかり記憶に残っていたり、課題ばっかり大きく感じていたりします。普通の感覚を大事にする人たちーー家族やマネージャーがそばにいて、私がふわふわしないようにつなぎとめてくれたっていうのもあります」

そして、それでいながら結論を出しすぎない揺らぎと曖昧さ。人が白黒はっきりつけたがるのは、曖昧さを抱え続ける強さを持たないことの裏返しでもあります。

「息の長い女優としてやっていけるような道を歩みたいーーそう思っていた時期もあるんですが、今は結構どっちでもよくて。この仕事を続けられなくなる時ってきっと来るだろうし、でも『やりたい』ってずっと思い続ける可能性もあるし、先のことは今は予想がつかないです。いつか突然やめたくなるかもしれないし。演技の仕事を『楽しい』と思ったことはあまりないですね。それでも続けているのはどうしてかといえば……このお仕事って、子供の頃に友達とか学校とかに悩んだ末に、どうにかして見つけた自分の居場所、自分が求めてもらえた場所なんですよね。そういう執着はあると思います。オーディションに苦労した時期もあるけれど、その分、他の嫌なことを忘れられたし、個別のお仕事として辛いものもありましたが、だとしても、ここは初めて自分で一歩踏み出して見つけた場所なので、簡単にはやめられないです」

 

作品の話に戻れば。そういう「答え」が見つけられないがために苦しみ、「答え」を見つけた(かに見える)他者を苛むのかもしれません。

「どうなんでしょうね。ただ人間って“答え”をなんで出したがるのかな、答えを出すために生きているのかなっていうふうには感じます。“答え”って出ても出なくてもどっちでもいいと、私は思うんですよね。答えが出なくたって、生きているだけで十分。大事なのはそれだけじゃないかなって思います」

 


波瑠(Haru)
女優。1991年6月17日生まれ、東京都出身。2006年、WOWOWドラマ『対岸の彼女』でデビュー。翌年、雑誌『Seventeen』(集英社)の専属モデルとしても活動。2015年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』でヒロイン・白岡あさ役を務める。その後、数々のドラマ、映画に出演。近年の出演作に映画『ホテルローヤル』(2020)、「弥生、三月君を愛した30年‐」(2020)、ドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(2020)などがある。


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<ドラマ紹介>
金曜ナイトドラマ
『愛しい嘘~優しい闇~』 (テレビ朝日系)
【毎週金曜】夜11:15~放送(※一部地域を除く)

マンガアプリ『Palcy(パルシィ)』で連載中の愛本みずほによる人気漫画『愛しい嘘 優しい闇』を実写化。中学卒業から14年経ったある日、不意に開催された同窓会。朗らかな再会とは裏腹に、水面下ではマウンティング合戦が……。そんな中、同窓会に参加した仲良しの6人が次々と亡くなります。それぞれが抱える闇と嘘とは。
主人公・今井望緒役を波瑠さん、望緒の初恋の人・雨宮秀一役を林遣都さんが演じます。


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撮影/塚田亮平
ヘア&メイク/宮本奈々
スタイリング/山本隆司(style3)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)
 
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