フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

2006年トリノオリンピックで、日本人として、そしてアジア人として初めて、フィギュアスケートで金メダルを獲得した荒川静香さん。
あの大舞台の美しい演技で世に知れ渡ることになり、荒川さんの代名詞にも、その年の新語・流行語大賞にもなった「イナバウアー」は、ご存知の方も多いかと思いますが、加点されるものではありません。
ちなみにイナバウアーという技は足の開き方を指すので、多くの方が目に焼き付けたであろう、上体を反らしたあのポーズは、正確には「レイバック・イナバウアー」と言うそうです。

荒川静香さん「2021 カーニバル・オン・アイス」より。写真:西村尚己/アフロスポーツ

まるで後出しジャンケンのようで申し訳ないのですが……
皆さんは、トリノのフリー演技の時、氷上に現れた荒川さんに、それまでの荒川さんとも、他の選手とも違う、大きなオーラを感じませんでしたか?
私は、「あれ、荒川さん、何か違う……」と思いながら演技を見始めたのですが、気がついたらくぎ付け、というよりも、くぎ付けになっていたことに気づかないほど、くぎ付けになっていました。そして現地でもスタンディングオベーションでしたね。

 

後日、トリノについてのインタビュー記事をいくつか拝見し、一言で言えば、「感謝の気持ちで滑った」ということを知りました。演技中、イナバウアーの時にはもう気持ちに余裕が生まれていて、想いを込めて滑ることができたそうです。
もちろんそんな心境に至るまでには、日々の練習だけでなく、ルールの変更に戦略的に対処すること、本番の会場の雰囲気に対応すること、直前にライバルを牽制することなど、あらゆることを緻密に考えて積み重ねてきたからこそ、なのですが、あのオーラは、そんな充実した日々の表れだったのですね。

確かに相手との勝負ではあるけれど、自分が何をどう積み重ねてきたか、その過程と、その過程だからこその結果が何より大事。最終的には、自分が自分とどう向き合うか、ということなのかもしれません。

スポーツだけでなく、仕事などにも通じる、深い学びのあるお話ですが、オリンピック女子フィギュア史上最年長の金メダリスト、と言っても、荒川さんは当時24歳。人生の厚みが、すごいですね。

冬季北京オリンピック開幕まであと3日。
東京オリンピックでも、多くの選手から、感謝の気持ちを感じました。大変な時だからこそ、本当に大切なことに気づけることもあるのですね。
オミクロン株の感染力は凄まじいですが、選手の皆さんが、充実した気持ちで伸び伸びと演技できることをお祈りしながら、応援します!

馬場典子のスケーティングの腕前は?
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