フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

今一番売れている辞書は何か、ご存じですか?

日テレ時代、放送に使う言葉を調べる時には、広辞苑に載っているかいないかを重要視していました。また、フジテレビ「ネプリーグ」では「広辞苑に載っている言葉を答えよ」というクイズもあることから、何となく辞書は広辞苑、という思い込みがあったのですが……。
2月2日に放送されたTBSのクイズ番組「東大王」日本語SPで、いま一番売れているものは『三省堂国語辞典』だと知りました。

『三省堂国語辞典』第八版(三省堂)

昨年12月に8年ぶりに改訂された、愛称“三国(サンコク)”は、「時代(いま)を写す辞書」として、今回約3500もの新しい言葉が掲載されたそうです。

「eスポーツ」「エコバッグ」「インフルエンサー」「香害」「デジタルトランスフォーメーション」や、コロナ関係の「ソーシャルディスタンス」「ウェビナー」「人流」「黙食」
など、まさに時世を表す言葉のほか、

「遠慮のかたまり」「ガテン系」「ホニャララ」「どこでもドア」
などすっかりお馴染みとなっている言葉や、

「持ってる」「きょうイチ」「腹落ち」「別日」「斜め上」「自分事」「素で」「聖地巡礼」「ゾーンに入る」「置きに行く」
のように気づいたら当たり前のように使っていた言葉、

「秒で」「ワンチャン」「チルい」「黒歴史」「完コピ」
といった若者言葉に、「撮れ高」なんていう元は業界用語の言葉、

「マリトッツォ」「羽付き餃子」「バインミー」「ビャンビャン麺」
など流行りのグルメまで。

驚いたことに、ビートたけしさんのギャグ「赤信号みんなで渡ればこわくない」も掲載されました。

 

編纂者の1人、飯間浩明(いいま ひろあき)さんによると、本来ギャグは載せるものではないのですが、今の若者はもはや慣用句として使っていることから、掲載を決めたそうです。
のちに辞書に載る「慣用句」を作ってしまった、たけしさんの社会や本質を見抜く目、本当にすごいですね。

また、噂やネットなどで誤った語源が通説となっていることもあるため、語源を掲載することも大切とのこと。例えばホルモンは、捨てるもの(放るもん)に由来していると言われていますが(私もそう思っていました)、本当は、戦前に栄養のあるものにホルモンと名付けられたことが語源だそうです。

当然といえば当然なのですが、飯間さんは普段から気になる言葉や新しい言葉を「ハンティング」されているそうで、テレビを見れば東大王の「早書き」や、街に出れば看板の「ちょい呑み」「おひとり様」などをすかさずチェック。
「黒歴史」は、元になったアニメを実際に見て、語源を確認されたそう。三浦しをんさんの『舟を編む』で感じた興奮と尊敬の念が蘇りました。

この日の東大王では標準語のアクセントもクイズになっていたのですが、実はアナウンサー必携の『NHKアクセント辞典』も時代と共に変化しているので、またの機会に書きたいな、と思っています。

最後に。
三省堂国語辞典第八版の特設サイトでは、自ら「爆誕」と表現しているところに、三国の意気を感じました。

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