最後にご紹介したいのは、著者の佐竹さんの言葉。猫と飼い主たちを長年見つめ続けてきた佐竹さんは、猫と一緒に暮らす人も、そうでない人も、思わずハッとするような言葉を私たちに届けてくれます。

「しあわせにするよ」という覚悟と責任を持って

捨てられていた子猫、人に心を許さずさまよっていた猫、病気やハンデを持つ猫、長年連れそった老猫……。猫生も個性もいろいろですが、それぞれの愛おしさがあり、それぞれの飼い主とのしあわせのかたちがあります。

保護猫活動を続けている方への取材も重ねてきましたが、その方たちは、猫たちに「必ずしあわせにするからね」と約束します。そして、「ずっと一緒だよ。しあわせにするよ」と約束してくれる家族へと手渡します。
 
「保護猫三姉妹のおかげで笑顔が戻った」シェルターからきた猫たちとの約束_img4
行政などと連携して保護譲渡活動を続けている団体「goens(ごえん)」の元には、捨て猫や多頭飼育崩壊などのSOSが毎日のように入ってくる(『猫との約束』より)。
猫は自分で運命を選べない。野生では生きていけない。苦しみ哀しみを訴えるすべがない。だからこそ、人は猫たちと、しっかりと「しあわせにするよ」という覚悟と責任を持って向き合っていかなければ。

小さないのちを守り抜くその約束は、個別の約束を超えて、「人間と猫」「社会的強者と弱者」という大きな共生社会の中でも、大切な土台のはずです。

猫たちが巡り会った人と綴るエピソードが、これから猫と暮らそうと思っている方たちへの道しるべともなってくれますように。すでに猫と暮らしている方は、そこにいるだけで愛猫がくれる至福を、あらためて堪能なさいますように。
 


著者プロフィール

佐竹 茉莉子(さたけ・まりこ)さん
フリーランスのライター。幼児期から猫はいつもそばに。2007年より、町々で出会った猫を、寄り添う人々や町の情景と共に自己流で撮り始める。Webサイト「フェリシモ猫部」創設時からの「道ばた猫日記」は12年目。朝日新聞系WebサイトSippoの連載「猫のいる風景」はYahooニュースなどでも度々取り上げられ、反響を呼ぶ。隔月刊の猫雑誌『猫びより』や女性誌での取材記事は、温かい目線に定評がある。

 

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『猫との約束』
著者:佐竹 茉莉子 辰巳出版 1430円(税込)

保護猫シェルターから迎え入れられて、終生の家族を見つけた猫たち。ささやかながらも至福の幸せを運んでくれる猫たちを、守り抜こうと決めて慈しむ人たち。住むところも、個性も違う「人間と猫」が紡ぎ出す、17編の実話を収録。猫たちの無邪気な表情に顔がほころび、その猫を見つめる人間の優しい眼差しに、思わず胸が熱くなる一冊です。フェリシモ猫部の人気ブログ『道ばた猫日記』と朝日新聞系ペット情報サイトsippoの連載『猫のいる風景』で紹介されたエピソードに、新たなエピソードを加えて書籍化。



構成/金澤英恵


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