フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

北京冬季オリンピックで、たくさんのデータを目にしました。
タイム、得点、出場回数……数字は、客観的かつ具体的な情報です。
同時に、その競技に精通していない人も注目する大きな大会では特に、数字だけでなく、それにどんな意味があるのか、どれだけすごいのか、を噛み砕くと、より伝わります。

 

面積では東京ドーム、高さでは東京タワーやスカイツリーが引き合いに出されることはすっかりお馴染みですよね。

今回のフィギュアスケート男子では、羽生結弦選手とネイサン・チェン選手のジャンプの回転速度を比較。さらに、ヘリコプターのプロペラの回転数も引き合いに出していて、そのすごさが良く分かりました。

2022年「北京五輪」フィギュア 男子 FSでの羽生結弦選手のジャンプの回転、連続写真。写真:新華社/アフロ

ただ、データを元にしたこうした表現は、辿り着くまでに、紆余曲折があることも。

先月、フジテレビの「かまいまち」という特番で、浅草の老舗珈琲店「珈琲アロマ」のオニオントーストをプレゼンしました。SNSでその美味しさを「エベレスト級」と表現したのですが、そこに至るまでのちょっとした話にお付き合い頂けましたら嬉しいです。

1964年、最初の東京オリンピックの年に開店した、昭和レトロなお店。
ミルクセーキを、バーテンダーと同じあのシェイカーを鮮やかに振って作るマスター。そうだった、本当は「milk shake」だった、と目から鱗。
オニオントーストの味だけでなく、長い年月、老若男女問わず多くの方に、今なお愛され続けている凄さも伝えたい。という思いが出発点でした。

珈琲アロマの藤森マスター。笑顔も、粛々と手仕事をされる姿も素敵です。

着目したのは、パンの厚さ。
34cm長さのパンを17枚切にしているので、1枚の厚さは約2cm。
2枚使ってサンドにするので、1食当たり約4cm。
1日平均約10食とのことで、1日当たり約40cm。
これまでの営業日数、約1万8869日。(暦の計算が一番大変でした……)。

58年間、オニオントーストに使ったであろう全てのパンを重ねてみると……
40cm×1万8869=75万4760cm。
なんと、7547m!

実は、富士山に届いたらいいな、そうしたら、「日本一の美味しさなんです!」と言えるな、なんて当たりをつけてはいたのですが、嬉しい誤算。というか、比較できないほど富士山を越えていて、少し困惑(笑)。

放送ではカットされた手描きのプレゼン画用紙。プレッシャーのない水彩画は楽しかったです。……もとい、「プレバト‼︎」のようにプレッシャーの中で描くのも楽しいです(笑)

そこで世界七大陸の最高峰を調べてみたら、アジア以外の六大陸の山々も余裕で超えていました。これは紛れもなくエベレスト級です!
オニオンとピクルスの厚みも計算に入れたらエベレストも超えているはず!
ということで、珈琲アロマのオニオントーストの美味しさは、拙い馬場典子調べではありますが、その歴史も含めて「エベレスト級」と表現することにしました。

ちなみに、紆余曲折(というより企画倒れ?)だったのは、オニオンの総重量や総堆積、パンの総面積など(笑)。
バラエティでしたが、久しぶりにスポーツ中継の血が騒いだのでした。
 

馬場典子のフォトギャラリー
▼右にスワイプしてください▼

前回記事「「ワンチャン」「チルい」「マリトッツォ」一番売れている辞書に見る、時代と言葉」>>