今はネットで「バズる」とすぐに有名人になれる時代。アイドルやタレントに憧れる若者も多いようですが、そこに努力は必要ないのでしょうか。
『誰でも15分だけは有名になれる』アンディ・ウォーホルの言葉です。ネット時代の今、これは現実味を増していますが、15分以降の世界に到達するには何を捧げればいいのか? 『15分の少女たち-アイドルのつくりかた-』はそんな問いからはじまります。


アイドルの卵・アイカ(黒髪ロングの子)は幼なじみのユマ(ショートヘアの子)とダンスを練習しています。元はモデルとしてスカウトされましたが、ぱっとせずアイドルのオーディションを受けることに。ダンスと歌が上手いユマにチェックしてもらいながら、二人は共に練習しています。

 

アイカたちを撮影しているのは、所属事務所・ムーンライトの社員・小林竜馬。就活の時期にテレビで見た新世代アイドルオーディションに思わず涙し、「アイドルには人を感動させる力がある」と思い、入社したのです。そして彼が今撮っているのも、アイドルオーディションのメイキング動画でした。

 

いよいよオーディション三次審査の日。不安気なアイカにユマは強気で「受かるよ二人で」と言いますが、彼女たちの予想を超えた結果が発表されました。ダンスと歌をユマに教えてもらっていたアイカの方が順位が上になったのです。しかも、一位。

 

ユマは13位でした。「私そこまで欲張ってないのに ユマちゃんより上だなんて」と動揺を抑えられないアイカはトップバッターで歌を披露することになりましたが、そこでアクシデントが⋯⋯。

 

その様子を冷静に眺めて、撮影していたのは雨宮P(プロデューサー)。アイカに起きたアクシデントに慌てふためく竜馬に対しドライに見えた彼女でしたが、実はアイドル一人一人のコンディションを観察し尽くしているのでした。

 

そして、「プロデューサーの作家性が一番強く出る」と言われる最終審査の打ち合わせの際、竜馬は雨宮Pに前回のアイドルオーディションに感動したことを伝えます。すると、彼女は「あれ、つまんなかったよね」と言い放ちました。

 

最終審査は4分33秒の自己PR。その様子を生配信すると雨宮Pは発表しました。

彼女の著書「物語がスターをつくる」には、タレントにしろアイドルにしろ、視聴者は彼らが売れるプロセスから応援したいものなのだ、と書かれています。その子がどんな性格でどんな挫折をしてどう成長したか。その「物語」が購入の判断材料になるということ。なので、彼女たちが発展途上なのはコンテンツとしておいしい。けれど、三次審査のアクシデントがそのまま配信されたことに違和感を抱いていた竜馬は言います。

 

数えきれないほどのアイドルをプロデュースしてきた雨宮Pは、アイドルの卵たちのオーディション風景を視聴者に晒すことで何を見たいのか。それは、自分の想像を超えるアイドルの誕生でした⋯⋯。

ポテンシャルを引き出そうする雨宮Pと、そこに食らいついてゆくことで輝き出すアイドルの原石。まだ視聴者目線でアイカの魅力を感じているままの竜馬はどう変化してゆくのでしょうか。

雨宮Pの名言が強烈ながら奥深いもの。

ネットのエゴサーチが気になりすぎて、様子がおかしくなっているアイカを見た竜馬が雨宮Pに「休ませてあげたらどうですか」と提案し、冷たく断られるシーン。

あの子たちは「商品」で、私たちは「商人」なのよ?

これは「負荷テスト」だという言葉に、竜馬と共に絶句しそうになるのですが、果たして雨宮Pは酷いプロデューサーなのでしょうか? アイドルビジネスの仕掛け人として、本当の優しさとはなんなのでしょうか。一人前のアイドルになってスケジュールが詰まった頃、いきなり休みを取りたいと言われたら? 視聴者の立場と商人としての立場とを切り分けられない竜馬の方が、彼女たちを結果的に潰すことになるのではないでしょうか。

読んでいると、アイカたちの置かれた立場の過酷さに息が止まりそうになります。アイドルになるのは決して簡単ではなくスポットライトを浴びる分、多くの荷を背負っているのです。そして、アイドルなど有名人に安易に憧れる若者たちと私たちも竜馬と似たようなもので、アイドルのことを何もわかっていなかったんだ、と感じるのです。
 

 

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『15分の少女たち -アイドルのつくりかた- 』
かっぴー(原著) 戸井 理恵(イラスト)

主人公は、大手芸能事務所「ムーンライト」の新入社員・小林竜馬。ムーンライトが手掛ける新アイドルグループプロジェクトに配属された彼は、まずは進行中のオーディションでメイキング映像を取ることを命じられる。そこで小林は、「アイドルビジネスのリアル」を知ることになって――



作者プロフィール 

原作:かっぴー
漫画家。1985年神奈川県生まれ。2015年9月、『フェイスブックポリス』をWebサイトへ公開し、大きな反響を呼んでネットデビュー。以降、『SNSポリスのSNS入門』『おしゃ家ソムリエおしゃ子』『おしゃれキングビート!』『裸の王様Vアパレル店員』『左ききのエレン』などWEBメディアで多数の連載を担当する。現在、週刊スピリッツにて『15分の少女たち-アイドルのつくりかた-』(かっぴー:原作・戸井理恵:漫画)を連載中。
Twitterアカウント:@nora_ito

イラスト:戸井理恵
講談社アフタヌーン四季大賞でデビュー。週刊スピリッツにて『15分の少女たち-アイドルのつくりかた-』(かっぴー:原作・戸井理恵:漫画)を連載中。
Twitterアカウント:@rie0331manimani


構成/大槻由実子
編集/坂口彩