ゴミをポイ捨てする夫にイライラしなくなった理由


──お二人はADHDに関する情報をYouTubeで発信されてきましたが、それを『ADHDの旦那って意外と面白いんよ』(以下、本書)という書籍として出版することが決まったときはどんなお気持ちでした?

ダイスケさん(以下、敬称略) すごく前向きに捉えていましたね。自分たちのことを洗いざらい書けるいいチャンスだなと。あとは、同じような悩みを抱える人の助けになればいいなと思いました。

ちゃんまりさん(以下、敬称略) 私たちがADHDに向き合おうと決意した頃は、ADHDの当事者が発信した情報があまり世に出ていなかったんです。専門家が解説する症例みたいなものしかなくて、周囲の人が具体的に取るべき行動とか、ADHDの人自身の心理状態とかがまったくわからなかった。ですから、当事者である私たちがそういうリアルな事例を発信すれば、役に立つと感じる人がいるのではないかと思いましたね。

──本書では「ADHDの人とは基本的に距離を置いた方がお互いにストレスが少なく済むので、必要以上に関わらないことをお勧めします」と、非常に冷静な意見を述べていますよね。そこがすごくリアルに感じられたのですが、すぐにそんなクールな考えになれたのですか?

ダイスケ 僕はもともと俯瞰的に物事を見る性格なので、それほど難しいことではなかったですね。ただ20歳そこそこの頃にADHDの診断を受けたときは、そんな風には考えられなかったですけど。仕事をやりながら2~3年くらいかけて身につけていった気がします。

ちゃんまり 私も最初の頃は、そこまでクールな考え方はできなかったです。ダイスケさんがADHDだとわかっても、その行動には感情が乗っているものだと思っていたので。たとえば、ゴミをポイ捨てするのは単に面倒くさがっているだけじゃないのか、とか。それを見てこちらも感情的になってしまうことがあったんですけど、ADHDの人の場合は感情とは関係なくオートマティックにそういう行動になると知り、思考がバチッと切り替わりました。

苦しいなら逃げて──発達障害を抱える夫婦が語った「幸せ」になる極意_img1
 


夫婦に必要なのは「淡々とやるべきことをやる」こと


──考え方が変わると気持ちも楽になりました?

ちゃんまり そうですね。ギャーギャー責め立てること自体が無駄というか。その時間を別のことに使ったほうが有意義だと考えるようになりました。相手のダメなところではなく、良いところに目を向けたほうが、人間関係が良くなることを痛感しました。

ダイスケ 結婚してだいぶ経った頃にちゃんまりもASDだと判明したので、自分たちのような発達障害の人間が気持ちよく生きるためにはどうすべきなのか、いくつか共通の認識を持つようにしましたね。簡単に言うと、周りの人に対してこういうことを言うべきではない、するべきではないという認識ですね。「発達障害だから理解してよ」と言ったところで、嫌われちゃうだけなので。よく「淡々とやるべきことをやっていく」という言葉を夫婦でかけ合っているんですけど、大きいことなんてしなくていいから、淡々と真面目に目の前のことをやっていこうと。そうすれば、だらしない部分やできない部分が目についても、お互いに許せるのではないか。夫婦関係や人間関係についてはそんな風に考えています。

ちゃんまり そこはダイスケさんにかなり学ばせてもらいましたね。発達障害の先輩として頼りにしています。

 

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ADHDの夫への対処法
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イラスト/S.k