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「20代男性の約4割はデートの経験がない」という政府の報告書がネットで話題となっています。以前、このコラムでは、恋愛格差是正と称して、いわゆる「壁ドン」などの恋愛テクニックを教育に取り込むべきという、研究者のプレゼン資料が物議を醸したケースを紹介しましたが、今回の報告書は、かなり本格的なものであり「デート経験」についての調査結果は、全体のごく一部でしかありません。

 


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話題となっているのは、内閣府の男女共同参画局が取りまとめた「男女共同参画白書 令和4年版」です。白書のテーマは「人生100年時代における結婚と家族〜家族の姿の変化と課題にどう向き合うか」というもので、新しい時代における家族のあり方について問題提起する内容です。

実は、物議を醸したプレゼン資料も、同局が主催する研究会で出てきたものであり、壁ドンは、あくまでも研究会メンバーの私見として提出された資料でしたが、こうした議論も含めて、最終的に政府が出してきたアウトプットのひとつが、今回の白書ということになります。

白書では、現在の日本において「お見合い」はほぼ消滅しており、約9割が恋愛結婚であることを各種調査結果から明らかにしています。一方で、男女ともに未婚と離婚の割合が高まっていることも明確な傾向として見て取れます。こうした状況において、「恋人として交際した人がいない」と回答した20〜30代の独身女性は24.1%、独身男性は37.6%となっており、交際経験がない20代の男性は4割近くに達していました。


この調査結果がネットで話題になったのですが、白書の主眼は、若者の恋愛経験ではなく、男女間で違いが生じている理由にあると考えられます。白書では直接、言及していませんが、日本では女性の社会進出が十分ではなく、男性と女性の経済力に差があるのが現実です。このため、経済力が低い女性は、男性に頼らざるを得ない部分があり、結果として交際経験の有無が男女間で発生している可能性が考えられます。

恋愛経験が乏しい若者の議論は、何十年も前からメディアでよく取り上げられており、近年では「草食系」といったキーワードも話題となりました。しかしながら、いつの時代においても恋愛に積極的ではない若者は一定数、存在しており、それは各種統計からはっきりしています。したがって、「現代の若者は……」という話にしてしまうと、本質を見誤ることになるでしょう。

 
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