今後も増えそうな介護保険の自己負担額


2年ごとに改正される公的医療保険、3年ごとに改正される介護保険制度ですが、2024年はその2つが同時に来るダブル改定で、2021年度の改正はその布石と言われていました。認知症患者の増加や団塊世代の高齢化などで、このままでは予算が足りなくなるのは明らかです。今後、介護保険の自己負担額が支払い能力によって細かく設定されてくることは、避けられない現実とも言えるでしょう。

年収770万円以上は高額介護サービス費が倍額に


それを踏まえた上で、今回話に挙がった千夏さんとあゆみさんのケースを見ていきましょう。介護サービスを利用する際に支払う自己負担額は、収入によって1~3割と異なります。要介護度が高く、介護サービスをフルで利用する場合は当然自己負担額も大きくなりますが、そんな時に助かるのが千夏さんのお父様が利用している「高額介護サービス費」です。自己負担をさらに軽減し、一定額を超えた支払いに対して上回った分を還付してくれる制度、高額介護サービス費についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

千夏さんの父親は、要介護5で月々35万円の介護サービスを利用していますが、1年前までは月々4万4400円の自己負担で抑えられていました。ところがそれが、月々9万3000円の自己負担になってしまったのです。

〜千夏さんの父親の例〜 ※年収770万円超、要介護5で月々35万円の介護サービス利用
・2021年7月利用分まで:月々4万4400円の自己負担/年間53万2800円
・2021年8月利用分から:月々9万3000円の自己負担/年間111万6000円
⇒倍以上に増額!

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厚生労働省作成の資料より

今回の見直しは、65歳以上年収770万円超世帯に大きな影響を及ぼしました。ただし、厚生労働省によると対象者は3万人に過ぎず、多くの人は影響がなかったとも言えます。

 


年収120万円超の施設入所者は年間26万円の負担増


大変なのは、千夏さんの友人のあゆみさんのご実家です。2021年8月利用分から介護保険施設における食費・居住費の負担限度額も見直され、収入の少ない世帯にも影響がありました。こちらは約27万人が対象となり、思わぬ出費に困惑する声が続出しています。

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厚生労働省作成の資料より

基本的に、介護保険施設の入所者やショートステイ利用者の食費・居住費は介護保険の対象外で、全額実費となっています。しかし一定の所得以下の方は「補足給付」という形で減額されていました。2021年7月までは年収155万円以下がその対象でしたが、2021年8月以降は年収120万円以下に変更となり、120万円超〜155万円以下の施設入所者は年間26万円もの負担が増えることになったのです。

〜あゆみさんの父親の例〜 ※年収140万円(120万円超〜155万円以下)の施設入所者
・2021年7月利用分まで:年間23万7250円の食費
・2021年8月利用分から:年間49万6400円の食費
⇒年間26万円もの負担増!

上の図を見ていただければ分かるように、ショートステイ利用者にとってもこれはかなりの痛手です。しかも下の図のように「補助を受けるための預貯金額などの資産要件」も見直され、預貯金の額によってはこれまで通り補助を受けられない方も出てきました。

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厚生労働省作成の資料より

今後も増えそうな介護保険の自己負担額。近頃は将来に対する不安から投資物件を購入する方も増えていますが、年金以外の収入がある層にとっては手放しで喜べない状況が続きそうです。

 
 


2021年度の主な介護保険制度の改正についてはこちら
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写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

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