写真:Shutterstock

自動車を所有せず、一時的に利用するカーシェアのサービスが伸びています。特にコロナ危機後は、感染リスクを回避するため、公共交通機関に代わる移動手段としてカーシェアを使う人が増加しました。ところが、カーシェアが便利になるにしたがって、当初の想定とは異なる利用方法が広まっているそうです。

 

当初、想定されていなかった(とされる)利用形態の中でも最も多いのは、ホテル代わりに車中泊としてカーシェアを利用するケースでしょう。終電がなくなり家に帰れない人がカーシェアを使って車中泊を行ったり、昼間の仮眠用に活用する人も少なくないようです。自動車の中はそれなりに静かですから、出先でのリモート会議に利用するケースも増えています。

ところが、カーシェアのサービス事業者の多くは、クルマを移動目的で使うことのみを想定しており、新しい利用方法をめぐっていろいろと問題が生じています。カーシェアの料金体系は、時間や走行距離に応じた仕組みになっているところが多く、この場合、ガソリンの消費量は料金には関係しません。

一方、車中泊などに利用して走行距離がゼロの場合でも、利用者がエアコンなどを利用する目的でエンジンをかけていた場合、ガソリンは消費されてしまいます。このところガソリン価格が跳ね上がっていますから、事業者にとっては大きな負担となっています。場所にもよりますが、カーシェアの駐車場が民家と隣接しているケースでは、騒音などの問題が発生するケースもあるようです。

サービス事業者の一部は、新しい利用方法については想定外であるとして、移動目的以外の用途について控えてもらうよう利用者にお願いしているそうです。しかしながら、サービスというのは事前に契約で定められるものですから、「お願い」という形で利用者に全てを委ねてしまうのは、適切なやり方とは言えません。

近年、ITが高度に発達してきたことから、自動車が単なる移動手段にとどまらず、様々なサービスに利用されることは繰り返し議論されてきたことです。今はどこでも高速のネット回線に接続できますし、スマホやノートパソコンがあれば、自動車はいつでもオフィスになり得ます。今後は自動運転技術が普及する可能性が高く、乗っている人が運転する必要すらなくなるかもしれません。そうなると、これまで一般的な施設で提供されていたサービスの多くが、車内空間に拡張してくることは容易に想像できます。

 
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