BLは“ボーイズ・ラブ”の意味だけにあらず！？吸血鬼が◯◯を阻止すべく奔走するブラッディ・ラブコメ『ババンババンバンバンパイア』

『おっさんずラブ』や『きのう何食べた？』などの登場、ヒットによって、今や一大ジャンルとして確立されつつあるBL。ですが、BLは“ボーイズ・ラブ”の意味だけにあらず。昨今では“ブラッディ・ラブコメ”なる新たなBLが登場しているんです。

今どきの吸血鬼の棲家は城ではなく日本の老舗銭湯！？

主人公は、こちらの見目麗しい男性・森蘭丸。創業60年の銭湯「こいの湯」にて、住み込みで働く彼には大きな秘密がありました。それは、本当は人間ではなく、吸血鬼であるということ。

0時に営業が終わった後、深夜に掃除・仕込みをする銭湯の仕事は、夜行性で日光が大敵な吸血鬼にとってはまさに天職なんだとか。ですが、彼がここで働くのは、決して仕事形態が吸血鬼の生態とマッチしているからではなく、真の理由があるのです。

人間に食の好みがあるように、吸血鬼にも血の好みがあります。数ある人間の血の中でも、蘭丸にとっては“18歳童貞”の血が最高級の食事。そして、もうすぐこの条件に当てはまるのが「こいの湯」4代目の立野李仁。

李仁が18歳を迎えるまであと3年。今すぐその血を吸い尽くしたい欲求に駆られる蘭丸ですが、最高の出来栄えでその純血をいただくためにグッと耐え忍び、さらに李仁が汚れぬようにと彼を見守り続けているのです。

最高級の血にありつくため！〇〇〇〇を阻止せよ

ですが、李仁が高校へ入学したと同時に、蘭丸にとっては危機的状況に突入してしまいます。なんと、李仁は通学途中に同じ学校に通う女生徒に恋をしてしまうのです。

恋をしたり、ちょっぴり非行に走ったりすることは、思春期を迎える人間にとって当たり前の行動ですが、蘭丸に言わせれば魂が汚れて血の味が濁ってしまうのだとか。

こうして、李仁の童貞喪失、及び血の味が濁ってしまうのを何がなんでも阻止したい！　と吸血鬼・蘭丸があれこれと奮闘するBL（ブラッディ・ラブコメディ）が幕を開けます。
 

すべてがダダ漏れな愛すべき吸血鬼

『トワイライト・サーガ』『ぼくのエリ』など、吸血鬼をテーマにしたロマンス映画の影響か、吸血鬼といえば雪のように真白い肌、整った顔立ちに妖艶な瞳など、見る者全てを魅了するような美貌、人ならざるもの特有のミステリアスさを連想しませんか？

蘭丸もそんな吸血鬼らしい眉目秀麗なビジュアルをしていますが、ミステリアスさだけは皆無。彼は、感情という感情、そして欲求すべてがダダ漏れており、従来の吸血鬼のように畏怖を抱くよりも、その分かりやすい性格を愛さずにはいられない……！　ニュータイプな吸血鬼なのです。

例えば、李仁のことを考えるだけでこのリアクション。

まるで中学2年生の男子並みの分かりやすさです。さらに、蘭丸は李仁の貞操を守るために、全身に日焼け止めを塗って（吸血鬼は日光がNG）通学路を尾行するなど、あれやこれやと奔走しますが、せっかく吸血鬼なんだからもっと必殺技とか使えば良いのに……！　とツッコミたくなるほど、シュールで愚直すぎる“童貞喪失阻止劇”に笑いが止まりません。

ですが、彼の森蘭丸という名前でもしや……？　とお思いの方もいるかもしれませんが、彼はもともと織田信長の近習“森蘭丸”でした。

そこから彼がいかにして吸血鬼になったのか。徐々に明かされる切ない彼の過去、そしてふいに飛び出す歴史ギャグも必見です。

ちなみに、タイトルが近年稀に見るほど言いづらいことでも話題の本作。書店でお求めの際、店員さんにタイトルを言う前には、あの“いい湯”に浸かった時に思わず歌いたくなる曲を思い浮かべると良いかもしれません。

せーの！　ババンババンバンバンパイア〜♪

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＜作者プロフィール＞
奥嶋ひろまさ
3月23日生まれ。2007年に『SHOUT！』で漫画家デビュー。代表作に実写映画化もされた『アキラNo.2』や、『ランチキ』『月に手をのばせ～QP・トム＆ジェリー外伝～』『頂き!成り上がり飯』『家庭教師の岸騎士です』など多数。現在は秋田書店「別冊少年チャンピオン」にて『ババンババンバンバンパイア』と、電子書籍ストア「eBookjapan」にて『2gether』（漫画担当）を連載中。