確認しておきたい親の情報
千佳さんのように、何の話し合いもしないまま介護に突入してしまった、というのはよく聞く話です。ですがもし事前にいくつかのことが分かっていたら、もっとスムーズに介護や看取りをできていたかもしれない。そう思う人は多くいます。そこで親が元気なうちに確認しておきたいことをピックアップしました。
・保険証、通帳、印鑑、保険証書、不動産の権利書などの保管場所
② もしも介護が必要になったら・どこで介護を受けたいか(自宅か施設か)
③ 認知症になってしまったら・医療の情報(かかりつけ医、既往歴、持病、服薬など)
・食べ物の好き嫌い(認知症でも好きなものには反応する傾向があるため)
・好きな飲み物(水分摂取量が低下したときのため)
・好きな音楽(聴くと気持ちが和らぐもの、好きなアーティストなど)
④ いよいよ先が長くないかも……・延命治療(胃瘻や人工呼吸器の装着など)やお墓、納骨の希望
⑤ 親が亡くなってしまったその時に・親戚や知人などの連絡リストの作成(亡くなったことを知らせるため)
・出生から現在までの本籍地(相続手続に戸籍の本籍地に申請する必要があるため)
情報が必要になるフェーズごとに書き出しましたが、いざその状態になった時に確認するには少し酷な内容もあります。そこでこれらのことは、できるだけ親御さんが元気なうちに聞いておいてください。
エンディングノートを活用して介護に備える
2010年前後に始まった終活ブームによって、エンディングノートの存在が一般的に知られるようになりました。エンディングノートは、その人の人生や人間関係、財産の状況や介護・葬儀に関する要望などを記入するものです。親が元気なうちに確認しておくべき事柄があらかじめ整理されているので、介護が始まる前にエンディングノートを活用するというのもお勧めです。
ただし単に書くことだけを勧めると、「死ぬのを待っているのか」「私を追い出すつもりなのか」と険悪になる場合も想定されます。また、エンディングノートを隅から隅まで記入しようとするとかなりの時間を要するので、それを親だけにやってもらうのは酷というもの。また、親に限らず、子世代にもいつ何が起こるかわかりません。
そこで「自分もやるよ」というぐらいの気軽な気持ちで、一緒にトライするのもお勧めです。たとえば親が話すことを子が書き留めれば、そこで同時に意志確認もできます。なお、エンディングノートは遺言書ではないので、法的な拘束力はありません。
家族間で話し合いたい介護のこと
千佳さんのように兄妹が複数いる場合は、介護に関する話し合いの場を設け、役割分担や介護にかけられるお金について一度話し合っておいてください。介護は今や、家族だけで担うのは難しい時代です。介護の専門職を頼ることも必要で、そのためにお金を使うのは当たり前のこと。ただ、ここで間違ってはいけないのは、無駄にお金を使うのではなく、最初に「どれだけ使えるのか」を把握して、「自分たちで介護サービスを選択する」ということです。
家族間では、以下のようなことを話し合っておくと良いでしょう。
使えるお金を把握しておかないと、介護保険を利用するにもどのサービスなら無理なく支払えるのかが判断しにくくなってしまいます。特に施設入居に関しては値段が大きく異なるため、施設選択に支障が出やすいのです。
また、突然命に関わるような病気やケガに見舞われた時に、延命治療などの希望をあらかじめ確認しておかないと、「そんなことを急に聞かれても困る、わからない」という事態になってしまいます。治療方針は親族が決めますが、その結果が思わしくないとかなりの後悔や自己嫌悪に陥りやすいもの。
ですがこれだけのことを事前に話し合っておければ、急に介護が必要になった時にも慌てません。まだまだ介護なんて……という方も、今年の帰省で少しだけでも話してみてはいかがでしょうか。
親に確認しておきたい情報と兄弟間で話し合うべき介護のことについてはこちら
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写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子
前回記事「親の介護は突然に...40~50代が「介護離職」について今のうちに確認しておくべきこと」>>
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