非常に厳しい言い方になりますが、今は元気だとしても、平均的な所得しかない人の場合、公的な保険がなければ、そもそも人生設計が成り立たないとの結論にならざるを得ません。逆に言えば、私たちは公的保険から絶大な恩恵を受けていることになります。

日本の国民皆保険制度は世界でもトップクラスの仕組みであり、私たちは、医療に関しては世界でもっとも恵まれ部類に入ると考えてよいでしょう。しかしながら、この制度を維持するためには、莫大な費用と人的なリソースが必要であることは言うまでもありません。

日本では誰でも病院にかかれる分、多くの患者を診る必要があり、1人の医療従事者が担当する患者数は欧米各国の3倍に達します。しかも日本の診療報酬(保険から医療機関に支払われる金額)は極めて安く、日本の医療機関は、常にギリギリの運営を余儀なくされています。

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新型コロナウイルスの感染が拡大する中、対応に追われる大阪・高槻市内の病院(写真は2021年当時)。写真:ロイター/アフロ

コロナのような感染症が発生すると、通常の2倍の人員が必要となり、諸外国では他の病棟から応援を回す形で医療体制を維持していますが、日本の場合、それが簡単にはできないのです。加えて言うと、日本では介護が必要な高齢入院患者も多く、これらの患者は、コロナで人出が足りないからといって、退院してもらうことは基本的に不可能です。

 

医療逼迫が発生する個別要因はいろいろありますが、根本的には、日本の医療体制に余裕がないことが最大の原因であり、その背景には、国民皆保険制度の維持があります。

今回のコロナ危機で、日本の医療制度が極めて厳しい状態にあることがあらためて明確になりました。

全国民が平等に病院を受診できる日本の医療制度は、何としても存続すべきものだと筆者は考えますが、そのためには、どうしてもお金が必要です。私たちは医療に対して、どの程度までなら負担を増やすことができるのか、真剣に考える時が来ています。
 

世界に誇る「国民皆保険」が破綻寸前。コロナで突きつけられる日本の医療の現状とは_img1
 


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