老後はすべて「自己責任」の時代に...NISA恒久化の陰で深刻化する“ある問題”とは_img0
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政府がNISA(少額投資非課税制度)の恒久化と非課税期間の無期限化について検討を開始しました。投資の観点からすると、恒久化や無期限化はメリットが大きく、投資をしている人、あるいは検討している人には朗報といえます。一方、制度拡充の背景には年金財政悪化という問題があり、乱暴に言ってしまうと、「これからはすべて自己責任で老後の生活を成り立たせてください」という意味に解釈することも可能です。

 

NISAは一定の条件を満たすと、売却益や配当金などへの課税が一定期間免除される制度です。「一般NISA」は2028年まで、年間120万円を上限に最長5年間、非課税措置を受けられます。積み立て型の「つみたてNISA」は、投資信託の商品に2042年まで投資することができ、年間40万円を上限に、最長20年間、非課税となります。

従来のNISA、特に一般NISAについては、制度として不備がありました。最大の欠点は、免税される期間が短期で固定されていることです。

投資というのは、将来の不確実性に対してリスクを取るという行為ですから、将来どうなるのかについて、予想出来ないことが大前提です。将来の不確実性にリスクを投じたところに収益(リターン)というものが存在するわけですから、投資の世界において、いつの時点でどのような出来事が発生するのか確実に予想することは不可能と考えるべきでしょう。

ところが、従来のNISAでは、免税される期間が固定されており、その間に 取得した株式の株価が上がって利益が出た場合、利益確定して減税のメリットを享受するのか、そのまま投資を継続するのか選択を迫られます。先ほど申し上げたように、将来を予測することは原理的に不可能ですから、このような状態になった時、私たちはどちらがトクなのか合理的に判断できません。


この話は、投資経験が豊富な人や、投資理論をよく理解した人にとっては当たり前のことですが、多くの人は、利益が出た後にどうするのか、というところまでなかなか気が回りません。NISAの制度を設計した人は、投資の知識や経験が十分ではないか、もしくは無期限にしてしまうと税金を徴収する機会がなくなるため、機械的に期限を設けた可能性が高いと思われます。もし、免税の期間が無期限に延長された場合、NISAの使い勝手は一気に向上するでしょう。


税制という部分に焦点を当てた場合、NISAほど有利な制度はありませんから、もし実現すれば、政府の大盤振る舞いということになります。しかしながら、これには大きな理由があると考えるべきであり、その理由とは、説明するまでもなく年金財政の悪化です。

 
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