谷川史子さんといえば、90年代の「りぼん」を思い出す人もいるのではないでしょうか。当時から今まで描かれ続ける谷川さんの漫画は線の細いタッチは変わらずも、かつて少女だった私たちと同じように年齢を重ねていっています。9月13日には人気シリーズ『おひとり様物語』の10巻が発売されました。

『おひとり様物語(1)』(Kissコミックス)

タイトルからわかるように、本作はさまざまなタイプの「おひとり様」が描かれるオムニバスストーリーです。彼女たちの職業やライフスタイルは実にバラバラで、みんな普通の女性たち。自分と似ている女性が一人は見つかるはずです。その一部をご紹介します。

 

・寂しいと言われるおひとり様な女


彼氏が長年いない独身だけど、一人の生活を自分なりに楽しむザ・おひとり様な彼女。自分的にはそれなりに幸せな休日の話をすると、後輩にこう言われてしまいます。

 


・彼がいても実質おひとり様な女


生活時間帯がまったく違う彼との同棲で、まるでひとり暮らしのような日々を過ごす彼女。特に不満はなかったのですが、不安をかき立てられることを友達に言われます。

 


・おひとり様だと思われない女


高嶺の花的存在な彼女。昔から「きっと彼氏がいるはず」と勘違いされ、恋のチャンスが遠ざかっていました。

 

私みたいな女は結婚した方が幸せになれるんだろう、と、密かな夢を捨てて現実的に婚活に挑むことにしますが⋯⋯。
 

・親に泣かれるおひとり様


昼も夜も仕事のことばかり考えている少女漫画家の彼女。でも親からの電話で「女の幸せ」を考えさせられてしまいます。

 

気づけば恋が対岸の火事になっていた。パートナーがいないとダメなんだろうか。やりがいがある仕事があって不自由ない生活を送っていてもこんな自分は寂しいのだろうか、と思いますが⋯⋯。
 

・初恋の人に再会しちゃったおひとり様


高校野球を現地で応援したくなった夏、甲子園に思い切って行ってみた彼女。するとそこで偶然の出会いが。

 

同級生だった頃は、いいなと思っていても声すらかけられなかった。でも今は、隣で高校野球を一緒に応援している。青春のリベンジ? 勇気を出して行動するといいことがあるのかも?
 

・離婚しておひとり様になった女


元夫と同じ職場で働き続けている彼女。もうすっぱり割り切ってドライな同僚関係なのかと思いきや、「別れても好きな人」だったようで。

 

別れた夫に恋人ができたらどうする? 今の距離感がちょうどいいと思っていたけれど、そんな問いかけをされて揺らぐ心。そして⋯⋯。

「おひとり様」な普通の女性たちのささいな日常を大切に、尊く、描く。劇的な展開は少ないけれど、各エピソードのヒロインが寂しさや逆風に負けず、自分の力で立ち上がっていくラストを見るとなんだか嬉しくなります。猛暑日の風鈴の音や、寒空の下で受け取るココアみたいに「あ、助かった」とほっとする感覚にもなれます。
ひとりだと寂しくて適当な選択肢で妥協しようとしたり、今の生活を捨てちゃおうかな、と思う瞬間がある。そんな自分の中の「おひとり様」の気持ちを優しく拾ってもらえた安心感なのです。そう、「おひとり様」の時間は、誰にでも人生の中で必ず訪れるんですよね。

本作は2008年から続くシリーズなのですが、当時は「おひとりさま」というワードが2005年に流行語大賞にノミネートされ、「自立して一人の時間を楽しむ人」というポジティブな意味が一般的になった頃でした。それから15年以上が経つ今、1巻と最新巻だと「おひとり様」の描き方がちょっとずつ変わっていっています。そして、近況報告をするがごとく、何度も登場するヒロインもいます。人生がちょっとずつ展開していく彼女たちと、同じ時を生きている気分に。「りぼん」の頃から私たち、ずいぶん遠くに歩いてきたね、これからもがんばろうね、と言ってあげたくなるのです。
 

 

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『おひとり様物語』

谷川 史子 (著)  講談社

ひとりで立てる、わたしでありたい──。 彼氏がいるけど微妙な関係に疑問を感じているOL、夫に距離を感じている既婚女性、彼氏ナシ独身 etc. 色々な形の“おひとり様”を描いた共感必至の大人気オムニバス・シリーズ!
 


作者プロフィール
谷川 史子

1986年に『ちはやぶるおくのほそみち』(りぼんオリジナル)でデビュー。可愛くて親しみやすい絵柄とストーリーで、男性にもファンが多い。現在Kissで『おひとり様物語』シリーズ連載中の他、ココハナ(集英社)などで執筆中。


構成/大槻由実子
編集/坂口彩