住宅火災の原因ナンバー1は「たばこの不始末」


栄子さんのお母様は台所での火の扱いが原因で危うく火事になりかけましたが、実は死者が発生した火災で最も多い出火原因はたばこによるもので、次いで電気器具、ストーブ、コンロとなっています(消防庁発表の「令和3年版消防白書」より)。

たばこの不始末で起こりやすいのは寝たばこで、寝具類への着火が原因で死者が発生するケースが最も多くなっています。喫煙習慣のある方には、寝たばこの禁止を促し、燃えにくいシーツや掛け布団カバーの使用を勧め、火災を起こす原因を極力排除してください。たばこに火がついていることを忘れて吸殻だらけの灰皿やごみ箱に捨てると、それがカーテンなどに燃え移ってしまう危険もあります。

ストーブに関しては、就寝時に何らかの弾みで寝具が触れてしまったり、ストーブで洗濯物を乾かすなどの暖房以外の使用で火災になる場合もあります。ストーブの周りには、衣類や寝具類、紙などの可燃物を置かないようにしましょう。

同じように、コンロ周りも整理したいところです。調理中にその場を離れないことはもちろん、コンロの周囲に可燃物は置かないようにしましょう。衣類への着火を防ぐには、エプロンやアームカバーを防炎品にするといった対策も効果的です。

 

①火災警報器の設置で早期覚知


ここからは、離れて暮らす子どもができる具体的な火災対策について見ていきましょう。まず行いたいのが、住宅用火災警報器の見直しです。

認知症高齢者グループホームやショートステイ、特別養護老人ホームなど、自力避難が困難な方々が利用する施設では、自動火災報知設備や火災通報設備などの設置基準が強化されています。火災が起こる確率は、それが自宅になっても変わりません。

火災警報器が作動すれば、万が一出火しても気づくことができ、消し止めることも可能です。基本的に、住宅用火災警報器は寝室と寝室がある階の階段上部(1階の階段は除く)に設置することが義務づけられていますが、キッチンやリビングなど、できる限り設置することをおススメします。

また、すでに設置されている警報器も定期的な作動確認を行いましょう。住宅用火災警報器の電池の寿命の目安は約10年です。マンションなどでは定期的に消防点検が行われていますが、戸建の方は注意が必要です。

②燃えにくい素材の活用で延焼拡大防止


カーテンやじゅうたんは、火がつくと一気に広がりやすくなります。そこでそれらの製品を、燃えにくい防炎品に変えることで延焼を防ぎます。インターネットで「防炎製品」と検索すると、寝具やカーテンなどさまざまな商品が出てきます。日本防炎協会のWebサイトでも防炎製品について詳しく紹介されているので、こちらも参考にしてみてください。

③ガスコンロの見直しで出火防止


古いガスコンロには安全装置が付いていないこともあるので、火災を防ぐ「過熱防止装置」が付いたコンロに買い替えるのも1つの方法です。過熱防止装置は、2008年10月以降に販売された国内のガスコンロに設置されている機能で、Siセンサーコンロとも言います。主に以下のような機能があります。

 

コンロによる火災の大半が消し忘れによるものですが、それを恐れて料理自体を制限してしまうと、認知症の方は症状の悪化が懸念されることもあるので悩ましいところです。


④IHクッキングヒーターへの切り替えで火災予防


IHクッキングヒーターやIHコンロのように、火を使わない道具にすれば火の心配は少なくなります。ただ、高齢者は新たなことに取り組むのが苦手なので、使い方がわからない可能性も出てきます。

最近では、音声ガイダンスが付いた機種や操作が簡単なシニア向けの製品も出ているので、インターネットで調べて検討してみてください。IHへの買い換えが煩わしければ、シンプルな機能だけを搭載した電子レンジを調理に活用するというのも1つの手です。


いざという時の個人賠償責任保険


他者にケガを負わせてしまった時や他者の所有物を壊してしまった時などに、損害を補償してくれる個人賠償責任保険(個人賠償責任補償特約)。万が一のために、この個人賠償責任保険を契約している方も多いと思います。

ですが火災を起こしてしまっていざ保険を使おうとしても、支払いが認められないケースもあります。それは保険加入者が認知症だった場合です。契約内容に「心神喪失に起因する損害賠償責任」が入っていると、認知症の人が該当するとみなされる場合があるので注意してください。

なお、地方自治体では認知症事故の補償制度をカバーしてくれる場合があります。自治体による保障の流れは以下の4ステップです。お住まいの地域の自治体が個人賠償責任保険を取り扱っているか、一度確認してみてはいかがでしょうか。

 

過熱防止装置が付いたコンロの特徴と自治体による認知症事故の保険請求についてはこちら
▼右にスワイプしてください▼


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

 


前回記事「入院後、歩くのが怖いと言い始めた75歳の母。今日からできる【ロコモ対策リスト】」>>

 
  • 1
  • 2