「食べログ」などのレビューサイトやSNSで、誰でもグルメ評論家になれてしまう時代。その「美味しい!」は信頼できるのでしょうか? 大勢が美味しいというグルメは本当に自分の舌に合う? 人気店や老舗の味がこっそり変わっていたらその違いに気づける人はどれだけいる? そんな問いを投げかける『辛辣なるグルメ』は店に媚びることなく、率直で辛辣なグルメ評論を書く男が主人公です。

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『辛辣なるグルメ(1)』(ビッグコミックス)

ネット中心に「グールマン」という名で覆面グルメ評論を書いている半田彦助。食べるのが好きだし自分の舌に自信がある。でも彼が評論を書く理由はそれだけではありません。
「私は グルメの世界を公明正大にしたいのだ。」
今夜もグルメ評論のため、寿司屋に出向いた彦助。店の評価は寿司が出てくる前から決まる。お酒を断って出されたお茶をひと口飲んで、心の中で評論。

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一流の店は熱くて飲めないお茶など出さないのです。しばらくすると、女性連れの客が入ってきました。女性をエスコートする彼の言動に小声でツッコミを入れる彦助。

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男性が「最初に玉子を頼むとその店の仕事の質がわかるんだよ」などと蘊蓄を連れの女性に話し続ける様子に、彦助のボソボソが止まらなくなります。
この店の売りだという、こはだを食べて「ちょっと私には酸っぱいです」と答える女性に「それは変だな」と言う男性。「変じゃない。舌の感覚は人それぞれだろうが」とボソッと言う彦助。

 

穴子に塗られる「つめ」の意味を女性に聞かれ答えられずにいる男性を見て、彦助はついに口を挟んでしまいます。「好きなものを好きなように食べて何が悪い」と反論する男性に彼は言います。

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寿司を食べる順番の大切さを説く彦助でしたが、その後に出された寿司の順番と味がおかしいことに気づいてしまいます……。この寿司屋がしていたこととは何だったのか。それを知った時、大将に彦助は言うのです。

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「うまい」「まずい」という評判よりも自分の舌を信用している彼。国産牛肉の高級ステーキ屋、老舗の鰻屋、有名作家が通った蕎麦屋などの人気店や老舗を食べ歩く中で、店がネットでの評価やメディアの取材に翻弄されていると知ります。

そんな彼の願いとは。

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だからこそどんなに定評のある店でも、食べてみてまずい時は「まずい」と率直に言うのです。

また、冒頭で寿司屋にエスコートされていた女性・比呂美の存在が本作のスパイスになっています。二話以降、彦助の行く店に先回りしているかのように現れる彼女のキャラは、気が強くてもちろん食通。時に彦助が彼女にたじたじになるようなシーンも。彼女は彦助をこっそりリスペクトしているのですが、二人が恋愛っぽくならず、あくまで「美味しいものを食べる同志」な関係のままなのがいいんですよ。

そして、彦助のライバル・グルメ評論家の阿蘇山涼子は、彼とは真逆の「日本人の舌」の代弁者。彼女はきっと「この人のレビューなら間違いない」と多くの人から思われているのでしょうが、そこにネットやメディア社会の闇を感じます。誰の評価なら間違いないのか? 自分が下す評価が、一番自分の好み。これって至極当たり前なことなのですが、つい誰かの言葉に振り回されて今日の食事を決めている私たちがいるのではないでしょうか。『辛辣なるグルメ』は2巻が9月30日に発売されます。

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『辛辣なるグルメ(2)』(ビッグコミックス)
 

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『辛辣なるグルメ』

香川 まさひと(原作), 若狭 星(漫画)

笑えて痛快! 超辛口グルメ評論漫画。「私はグルメの世界を公明正大にしたいのだ」⋯「グールマン」の筆名で、ネット中心に覆面グルメ評論を続ける男、半田彦助。怒れる信念の男が、金と権力にまみれたグルメ業界をブッタ斬る。

 

作者プロフィール

香川まさひと

脚本家・漫画原作者。漫画サンデーで連載されていた『監察医朝顔』は、TVドラマ化され、大人気作品に。現在、『前科者』(漫画:月島冬二/ビッグコミックオリジナル)『辛辣なるグルメ』(漫画:若狭星/ビッグコミック)を連載中。

若狭星
漫画家。『おとむらい』『すばらしきかな人生 ―まさみ―』『ましろ日』(いずれもビッグコミック)などが代表作。現在、『辛辣なるグルメ』(原作:香川まさひと/ビッグコミック)を連載中。


©香川まさひと・若狭星/小学館「ビッグコミック」連載中
構成/大槻由実子
編集/坂口彩

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