「両親の再婚で、突然きょうだいができた!」なんて設定のマンガは星の数ほどあるわけですが、女性向けマンガアプリ「Palcy」で連載中の『水曜姉弟』も、両親の再婚で26歳の女性に13歳の中学生の弟ができる、というところから始まります。年齢が半分ということもあってか、初顔合わせの時はぎこちなかった二人ですが、美味しい食事と“あるモノ”が二人を少しずつ近づけ、ゆっくりと姉弟になっていくという素敵なお話です。

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『水曜姉弟』(1)小菊路 よう (KCデラックス)


もしかして私、新しくできた弟に嫌がられてる!?


26歳のトーコは、二人で暮らしてきた母が再婚することになり、13歳の弟ができます。彼の名はナツくん。初めて顔を合わせた時にいきなり睨まれ、まるで警戒心MAXの猫のよう。

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トーコはもともと母と一緒に住んでいたアパートで一人暮らしをすることになり、新婚の両親とナツくんは新居で一緒に暮らしています。でも、「週1回は2人っきりの時間が欲しいの♡」という両親の希望で、毎週水曜日だけナツくんがトーコのアパートに泊まることになりました。トーコとしては、ナツくんのために夕飯を作り、家に泊まってもらうのは全然構わないものの、彼が13歳も年下なので共通の話題がなく、ふと気がつくとナツくんがトーコのことを睨んでいたりして、もしかして自分と過ごすのが嫌なんじゃないか……、というのが目下の悩み。

そんなある日、今日が水曜日であることを忘れてしまっていたトーコ。慌ててナツくんに「遅れる」と連絡を入れてアパートに帰ると、ドアの前でぎろりと睨むナツくんの姿が……。いつもなら夕飯を準備しておくのですが、トーコはそれももちろん忘れていました。するとナツくんから、「僕 つくってもいいですか」と意外な提案が。トーコが遅れて帰ってくることを知ったナツくんは、スーパーで材料を買ってきてくれていたのです。ナツくん、デキるやつ!

 

13歳の少年が取り出した「お酒もどき」

 

毎週水曜日、仕事で疲れて帰ってきたあとに、夕飯の準備をするトーコを見ていたナツくんは、「今日こそは」と自分で作り始めたのです。ナツくんは父との暮らしが長かったからか、中学生でも料理に慣れている様子。

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台所に立ったナツくんは、慣れているどころか、かなり手際良く料理を作ります。そして、「トーコさんと飲もうと持ってきました」と、ワインボトルを取り出します。ナツくんは13歳なのでさすがにお酒はだめでしょ……、と思いきや、それは、ナツくんが前の晩に作った「赤ワイン風お酒もどき」だったのです(レシピはぜひ試し読みで確認を!)。

ナツくんがわざわざお手製ドリンクを作ってきたのには理由がありました。大人同士であればよく知らない間柄でも、お酒を飲みながらだとすぐに打ち解けることがあるものです。人付き合いが得意ではないナツくんは、未成年だからお酒は飲めないけれど、「お酒もどき」を交わしながらなら、トーコとも親しくなれるのではないかと考えたのです。ナツくん、健気でいいやつ!

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早速、ナツくんお手製の甘辛く味付けした肉じゃがと、「赤ワイン風お酒もどき」を味見し、あまりの美味しさにとびきりの笑顔を見せるトーコ。それを見ていたナツくんは、はじめて13歳の少年らしい、緊張が緩んだ素の表情を浮かべていました。

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ナツくんは緊張すると睨む目つきになってしまうようで、今までトーコが「睨まれてる?」「嫌がられてる?」と思っていたのは完全に誤解だったのです。トーコはようやく、年齢が自分の半分しかない彼の方こそ緊張や不安でいっぱいで、それでもなんとか自分との距離を縮めようとしてくれていたことに気づきます。

これからも毎週水曜は一緒にご飯を作って、「お酒もどき」で乾杯することに決めた二人。水曜日を重ねるごとに二人の距離感はゆるゆると解けていき、姉弟という新たな絆が確かなものになっていく過程が丁寧に描かれていきます。


「飲みニケーション」だけがコミュニケーションじゃない!


お酒が飲めない、もしくは、あまり強くはないけど、みんなでわいわいお酒を飲む場や雰囲気が好きという人は多いのではないでしょうか。また、お酒を飲みすぎて、せっかくの美味しい料理の味がよくわからなかった、なんて経験を持つ人も少なくないはず。

近年、ノンアルコールカクテルを意味する「モクテル」が注目を集めていて、モクテルが充実しているバーも増えてきました。中学生のナツくんが作る「お酒もどき」もまさにモクテル。ただ見た目や雰囲気を似せただけではなく、本物のお酒がどう作られているかを紐解いた上で、それをアルコールなしで再現しているのがすごいところ。例えば第一話の「赤ワイン風」お酒もどきでは、クローヴやカルダモンなどのスパイスで赤ワインらしいスモーキーさを表現し、山ぶどうジュースで酸味や渋み、色合いを出しています。各話の最後に、「お酒もどき」のレシピが掲載されているので、自分で再現することもできます(というか作ってみたくなる!)。

お酒を飲みながらコミュニケーションを取る「飲みニケーション」や、飲酒を強要する「アルハラ」など、かつての悪しき習慣が問題視されるようになってきましたが、本来、食事のひとときは、大切な人と楽しく過ごしたいもの。適度なお酒はいいけれど、度を過ぎるのは論外で、お酒が苦手な人や未成年がその輪に入れないのも残念なこと。でも、「お酒もどき」があれば、多くのことを解決してくれそうです。

また、長引くコロナ禍で、家飲みの機会が増えてきたからこそ、この物語の姉弟のように、何気ない日常の中で、自分の家でくつろぎながら美味しいご飯と飲み物を味わえる尊さが心に染み入ります。トーコとナツくんが、とにかく二人ともかわいくていい! 「お酒もどき」はもちろんのこと、手作りごはんもどれも美味しそう。読んでいるだけでこちらもほっこりと幸せな気持ちにしてくれ、なんなら日々の疲れ切った心も浄化してもらえそうな、ヒーリング効果絶大な作品です。現在、3巻まで発売中です。ぜひチェックを!

 

『水曜姉弟』第1〜3話をぜひチェック!レシピつき
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『水曜姉弟』
小菊路よう 講談社

26歳のOLトーコは、母が再婚し13歳年下のナツが弟になった。週に一度2人きりの時間が欲しいという両親の頼みで、毎週水曜日はナツがトーコの部屋に泊まりにくることに。突然姉弟になったトーコとナツはぎこちなさを抱えつつも、一緒に料理やお酒に似たノンアルコール飲料を手作りして徐々に打ち解けていく。『童貞地獄』『七つの大罪 セブンデイズ‐盗賊と聖少女‐』『激辛お嬢さまは自分を罰したい』『佐伯さんは眠ってる』の小菊路ようが描く姉弟物語!