モノが多すぎることで生じるリスク
聡子さんがおっしゃる通り、快適だと思って住んでいる家であれば、「汚いから片づけよう」と言われていい気がする親はいません。そこでまず、モノが多すぎることで生じるリスクを伝えましょう。高齢者の住まいというのは、「モノが多い=汚い」のひと言で片づけられるものではありません。
モノが多すぎると、火災のきっかけになる、転倒事故につながる、カビが発生する、害虫に刺されるなど、多くのリスクが生じます。高齢になると、片づけは「綺麗さ」よりも「安全性を高めること」がポイントになってくるのです。
たとえば、あえて置かれている台などは、起き上がりや歩行の援助になる場合もあるので取り外してはいけません。本当に不要なものかを確認して、明らかに不要なものはリスクを説明し、片づけを提案してみてください。
親が元気なうちに実家を片づけるメリット
親が元気なうちに実家を片づけるメリットは他にもあります。たとえば、車椅子になったことを機に実家をリフォームする場合、ある程度家の中を片づける必要が出てくるでしょう。その時になってバタバタするのではなく、親が元気なうちに片づけに着手できていれば、スムーズに作業が進められます。また、片づけによってスペースが確保できると、将来的に在宅で介護をすることになっても介助を受けやすくなります。
たとえ介護が始まっていなくても、片づけを行うことで家中の財産を把握できますし、「どこに何があるかが分かっていると、入院などの緊急時にも安心」と親御さんに伝えるのも1つの手です。
なお、親亡き後の遺品整理は、2割ほどの方が1年以上かかってしまうというデータも出ています。気持ちの整理がつかずに手をつけられなかったり、遺品を捨てること自体を躊躇してしまうなど、遺品整理は生前整理に比べて何かと辛いものです。せめて親が元気なうちに価値のあるモノが分かっていれば、少しは楽に片づけが進められるのではないでしょうか。
実家の片づけにおいて子ども世代ができること
実際に実家を片づけ始める前に、子ども世代は自分たちのモノが実家に残っていないかどうかを確認してみてください。親も70〜80代になると、自分のモノも片づけられないのに子どものモノにはもっと手をつけられず、負担にしかなりません。親に行動を促す前に、子どもができることとして「実家を物置き代わりにしない」を徹底しましょう。
部屋数も限られている中で、1部屋でも倉庫のように使える部屋があれば実家もスッキリするでしょうし、子世代が必死に片づけをしている姿を見れば、親世代も重い腰を上げるのではないでしょうか。
高齢になると使いづらくなる洋服と食器は?
高齢世帯だからこそ不要なモノというのもあります。たとえば洋服と食器は、捨てられずに増え続けるモノの1、2を争うものかもしれません。そこで衣類や食器に関して、処分する傾向にあるものをピックアップしてみました。
洋服は、高齢になるとリハビリパンツの利用などで1サイズほど大きなものが使いやすい場合もあります。また、着るものに無頓着になると、上下で別々の柄物を合わせても本人は気にしていなかったりも。そこで見直しや買い替えをする際は、上は無地、下は柄など決めておけば、1人で着替えをしても変なコーディネートにならずに済みます。
実家の片づけのコツは「勝手にモノを捨てないこと」
実家の片づけのコツは、どうせ分からないからと「モノを勝手に捨てない」ということ。いくらモノが溢れていても、大切なモノ、捨てたくないモノをピックアップすることは大切です。まずは会話をして、確かめてみるところから始めてください。
子どもに「片づけて」と急かされると、抵抗する親も少なくありません。そこで場合によっては、自力でするより業者に頼むという方法もあります。廃棄量にも左右されますが、相場は2LDK〜3LDKで10〜50万円程度。専門の業者に依頼すれば、必要なモノと不要なモノを確認しながら清掃を進めてもらえるので、親と喧嘩になる可能性は低くなります。
ここからは遺品整理代行の話になってしまいますが、遺品整理士という資格を付与している「一般財団法人 遺品整理士認定協会」のホームページでは、協会が優良企業と認定した業者一覧が掲載されています。地域や業者によっても金額が異なりますので、必要であれば見積もりを出した上で、ご家族に合った方法を検討してみてください。
実家を片づけるメリットと高齢になると不要になりがちなものについてはこちら
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写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子
前回記事「親の介護度進行を左右するって本当?700万人の高齢者が介護に使う「ケアプラン」とは」>>
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