かつては超能力や心霊現象など、科学を超越した現象を取り上げる「オカルト番組」が多く放送されていましたが、気づけばめっきり減ってしまい、今では胡散臭さを感じる人も少なくありません。そもそも「オカルト」の語源は、ラテン語の“隠されたもの(occulta)”で、英語では神秘的な、超自然的な、という意味を持ちます。オカルト的なるものを信じるかどうかはその人次第ではありますが、この世の中には現代科学では説明のつかないものがあるかも、と思うとワクワクしますし、未知のものだからこそ知りたいという好奇心も刺激されるものではないでしょうか。現在、アフタヌーンで連載中の『カオスゲーム』は、オカルト要素満載のサスペンス。ちょっと怖いのだけど、目が話せない注目作です!

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『カオスゲーム(1)』(アフタヌーンKC)


スクープを潰された女性週刊誌記者の、やり場のない怒り。


物語の主人公は週刊誌記者の鈴木蘭。キャバ嬢に扮して大物政治家・橋下議員と暴力団の黒い交際の現場を突き止めるほど、熱血タイプでどこまでも真っ直ぐな女性です。

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橋下議員にセクハラされつつも、フリーカメラマンの町田とタッグを組んで現場の写真も押さえることに成功した鈴木。大スクープを飛ばして、ついでにセクハラの恨みを晴らす気満々でしたが、翌日、編集長にあえなくボツにされてしまいます。その理由は、橋下議員と鈴木が所属する出版社の社長が義理の兄弟だから。スクープを褒められるどころか、「社員のお前がなんでこんなことも知らねぇんだよ」と怒られる始末。

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町田は、憤りを感じてモヤモヤしている鈴木を見かねて、下戸なのに愚痴飲みに付き合ってくれることに。居酒屋で「権力に屈してたら報道なんてあり得ませんよ!」とぶちまけますが、さまざまな経験を重ねてきた町田は至って冷静。今回のスクープも会社の看板あってのタレコミで、取材も会社から経費が出ている以上、会社の不利益になる記事が出せないのは当然だと諭します。そんなことは鈴木だってわかっているものの、そういう不条理さが許せないから、記者になったと言い切ります。

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町田は、その若さゆえの熱意に何かを感じたのか、「東京一(あずまきょういち)」というジャーナリストの名刺を鈴木に渡します。政治からオカルトまで何でも扱うフリーのジャーナリストで、今回のネタも東に流せ、という町田。しかし、社員記者が他社にネタを流せば責任を問われることになる、と釘も刺します。そんな町田の想いに触れ、照れながらも感謝する鈴木のもとに、今回のスクープの情報提供者から「今から会いたい」と連絡が入ります。

 

暴力団員に監禁され、絶体絶命のピンチ!


町田が車を運転し、指定された倉庫に向かったところ、二人は情報提供者のスマホを奪っていた暴力団員に拘束されてしまいます。リーダーは、キャバクラで橋下議員と密約を交わしていた、高山という男でした。容赦ない暴行を加えられる町田を見かね、鈴木は記事がボツになったので見逃してくれと懇願します。しかし、そんなことで高山たちが許すはずもなく、鈴木にも危害を加えようとします。鈴木のシャツをナイフで破った時、あらわになったのは、鈴木が生まれた時からへそのあたりにある、円が3つ重なった不思議な痣。

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高山がその痣に気を取られている時に、突然姿を現したのは、顔に不気味な切り傷を負った、盲目の大男。男は意味のわからないことをブツブツと言っていますが、暴力団員たちが大男を排除しようと攻撃を仕掛けた瞬間、傷の男は何もしていないのに、鉄パイプを持った暴力団員が床の血で足を滑らせたのを皮切りに、いくつもの偶然が重なって連鎖的に暴力団員たちが命を落としていきます。わけがわからない鈴木ですが、この隙を突いて、町田と倉庫から逃げ出します。

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倉庫の横に停まっていた車に乗り込み、逃げようとする二人。前方に傷の男が立っていましたが、鈴木はアクセルを踏んで、突っ込んで突破しようと試みます。しかし、なぜか傷の男にぶつからず、車は倉庫の壁に激突。傷の男は拳銃で町田の頭を撃ち抜き、続いて鈴木を殺そうとします。しかし、弾詰まりを起こして発砲されず、鈴木はすんでのところで死を回避します。その様子を見た傷の男は、目を見開いて、「神を見たことがあるだろう」という謎の言葉を投げかけます。大男の瞳には、鈴木のお腹にある痣に似た、□が3つ重なった、謎の印が刻み込まれていました。

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傷の男を追い、真実を暴け!


次に鈴木が意識を取り戻したのは病院の一室でした。車を運転してついてきてくれた町田が巻き添えで殺されてしまったのは自分のせいだ、と自責の念に駆られる鈴木。しかし、テレビをつけると、倉庫での事件はヤクザの抗争として報道されており、鈴木が警察に傷の男の話をしても全く相手にされませんでした。

鈴木にできることは、あの傷の男の正体を明らかにし、真相を暴くこと。編集長に辞表を叩きつけて一人で奔走しようとした時に、彼女の前に姿を現したのが、町田がくれた名刺の主である東。東はあの倉庫で起こった偶然の殺人事件に興味を示し、オカルト的な側面から掘り下げてみたいといいます。利害が一致した二人はタッグを組み、鈴木のお腹の痣や傷の男の眼に刻まれた印などを手がかりに取材を進めることになります。しかし、動き始めて早々、二人にさまざまな異常現象が襲いかかり、命の危険にさらされることに――。

いや〜、とにかく1話が濃い、濃すぎる! 第1話からして72ページもあるのですが、圧倒的な画力でグイグイと引っ張っていきます。そして、話数を重ねるごとに謎が謎を呼び、オカルト度も増していくのです。熱血肌で直情的な鈴木と、オタク気質のオカルトマニアである東との凸凹コンビで笑わせつつも、鈴木と似たような痣を持つ人々の登場によって、物語の展開が加速していきます。10月25日発売のアフタヌーン2022年12月号に掲載されているのは4話なのですが、すでに怒涛の展開になっています(ぜひ本誌をチェック!)。

『AKIRA』で知られる大友克洋さんがツイッターで本作を読んでいるとツイートし、注目度の高い本作。11月22日には単行本1巻も発売されます。怖いものや血みどろ系が苦手な人がいるかもしれませんが、その恐怖をはるかに上回るサスペンス要素がてんこ盛り。マンガ好きなら青田買いしておくべき作品です。ちなみに、山嵜先生が「アフタヌーン」四季賞2020冬のコンテストの四季大賞を受賞した『岸辺の夢』も、悪夢に出てきそうでめちゃくちゃおすすめです(褒め言葉)。

 

【漫画】『カオスゲーム』第1話を試し読み!
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『カオスゲーム』
山嵜大輝 講談社

正義に燃える週刊誌記者・鈴木蘭は、政治家が裏社会と繋がっているという特ダネを入手する。
だが、裏社会の人間に目を付けられてしまい、命の危機に……!
しかし、裏社会よりも危険な「何か」が、そこに迫ってきていた。
『岸辺の夢』にて「アフタヌーン」四季賞2020冬のコンテストの四季大賞を受賞し、公開時にTwitterで13000「いいね」を獲得した新鋭による、初連載!



<プロフィール>
やまざきだいき

『岸辺の夢』にて、アフタヌーン四季賞2020冬のコンテスト四季大賞を受賞。
同作は公開時にTwitterにて13000を超える「いいね」をもらい、話題になる。
『カオスゲーム』にて連載デビュー。

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