それを裏付けるように、今期は他にも涙を流すイケメンキャラが多く登場しています。たとえば『祈りのカルテ~研修医の謎解き診察記録』で玉森裕太が演じているのは、周囲の顔色ばかり見てしまう研修医。その観察力を生かして、患者たちが明かそうとしない悩みを謎解いていくというストーリーなのですが、謎を解くシーンになると突如キリリと頼もしくなる、というわけでもありません。終始泣いたりオロオロしたり。それを強い女医たちが「やれやれ」と見守りサポートしている、という感じなのです。

また『エルピス~希望、あるいは災い~』でエリートTVディレクターを演じている前田郷敦も、初回からシクシクと泣いています。こちらは、元売れっ子アナウンサーの恵那(長澤まさみ)と一緒に冤罪事件を追うというものなのですが、どうやら彼は何らか後ろめたい心の闇を抱えている様子。そこに向き合う怖さに怯え泣いている一方で、初めは及び腰だった恵那のほうが、「私は一人でもこのネタを追う」と走り始めている。あっという間に立場逆転です。

このように今期のドラマは、情けなくもどこか愛おしいイケメンたちが鮮烈な存在感を放っています。そうなると表裏一体で、女性は、このか弱き男性たちを守るというキャラクターが多くなってきます。もちろん、清原果耶主演の『霊媒探偵・城塚翡翠』や、本田翼の『君の花になる』など、男性が女性を守ったり、はたまた男性が女性の願いを叶えてあげる、といった従来構図のドラマも健在です。ただし視聴率や見逃し配信の再生数を見る限り、支持度は圧倒的に前者に軍配が上がっている。おそらくこの流れは、今後も勢いを増しながらしばらく続くのではないかと見ています。