『にじいろのさかな』30周年を迎えたインタビュー

すっかりコロナ前の活気を取り戻したヨーロッパ。そんなドイツで2022年10月19日から23日までの5日間、フランクフルト国際ブックフェアが開催されました。今年は多くの国で渡航制限が緩和されたこともあり、フェアにはたくさんの国のブースが立ち並び、多彩なイベントが催されました。

フランクフルト・ブックフェアで取材を受けるマーカス・フィスター氏  写真提供:ノルドズッド社

特に注目を集めたのは、絵本「にじいろのさかな」(マーカス・フィスター/作、谷川俊太郎/訳)シリーズのブースです。世界で3000万人以上に読まれている「にじいろのさかな」シリーズは、2022年に生誕30年を迎え、ますます人気が高まっています。

フランクフルト・ブックフェアで取材を受けるマーカス・フィスター氏  写真提供:ノルドズッド社

スイス・ノルドズッド社のブースには、30周年記念の多種多様の「にじいろのさかな」シリーズの絵本が展示され、そのなかには、クリスマスに親子で楽しめる美しいボードブック絵本『メリークリスマス、にじいろのさかな』もありました。

多くの人が「にじいろのさかな」のコーナーに集まる(フランクフルト・ブックフェアにて) 写真提供・ノルドズッド社

もうすぐやってくるクリスマスをとても楽しみにしているヨーロッパの人たち。「にじいろのさかな」の著者、マーカス・フィスターさんの住むスイスでも、11月中旬にはクリスマスマーケットの屋台が並び、イルミネーションやオーナメントで街が彩られ、1年でもっとも華やかなシーズンになります。

そこで、フィスターさんにヨーロッパのすてきなクリスマスと『にじいろのさかな』への想いをうかがいました。

 


キラキラ光るうろこの美しいさかな


──「にじいろのさかな」シリーズは、第1作が1992年にスイスで刊行されてから30周年を迎えます。特別なものを他人と「シェア」することで、より幸せを得ていくというテーマが受け入れられ、世界を代表するロングセラーとなりました。なんといっても、にじうおの銀色に光るうろこが魅力的です。なぜ、この光るうろこをつけようと思われたのですか?

フィスターさん:この物語を着想したとき、光り輝くうろこは絶対に必要なものでした。これがなかったら、物語は成立しなかったでしょう。キラキラしたホログラフィーはお金や豊かさを象徴するもので、私たちはそれを分かち合わなければなりません。でも、キラキラ光るうろこは、にじうおにとって特別なものでしたから、人に分け与えるには自分を変える勇気が必要だったと感じています。


雪の積もったベルンは、まるでおとぎ話の街のよう


──『メリークリスマス、にじいろのさかな』は、クリスマスにキラキラな気持ちをみんなに少しずつプレゼントしていくお話です。なぜ、クリスマスをテーマに選ばれたのですか。

フィスターさん:プレゼントを贈りあったり、飾りつけをつくったりすることは、クリスマスの伝統的な風習です。『にじいろのさかな』のテーマを考えると、クリスマスの絵本をつくるのは、ごく自然な流れだったかもしれませんね。

昼と夜で印象が変わる素敵なツリーは、なんとフィスターさんの手づくり  写真提供:マーカス・フィスター氏

──ベルンのご自宅にあるクリスマスツリーは手づくりだとうかがいました。とてもおしゃれですね! ベルンのクリスマスは、どのようなものですか。

フィスターさん:ここ数年はめったにないのですが、クリスマスに雪が積もると、とりわけベルンはおとぎ話に出てくる街のようにすてきなんですよ。

──クリスマスの日は、どのように過ごされますか。

フィスターさん:クリスマスは、私たちにとって大切で伝統的な祝祭日です。家族全員に会える日でもあります。クリスマスには私の母はもちろん、私の子どもたちの家族も孫を連れてきてくれます。ときには私のきょうだいも集まります。そして、みなでいっしょに歌ったり、楽器を奏でたりして楽しむんですよ。音楽があることで、私たち家族はいっそう豊かにそのひとときを過ごせるのです。

スイスのクリスマス風景 写真:アフロ

──『メリークリスマス、にじいろのさかな』は、コンパクトなボードブックです。お孫さんたちが持ち歩く宝物にぴったりのサイズですね。

フィスターさん:ボードブックは、子どもたちが物語や本の幻想的ですばらしい世界に入るための最初の一歩になると思います。読者のみなさんも、ぜひこの本を楽しんでくださいね! そして、「にじいろのさかな」シリーズをこれからも読み続けてくださいね。

 


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『メリークリスマス、にじいろのさかな』
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『にじいろの さかなと おはなしさん』
作:マーカス・フィスター/訳:谷川俊太郎

にじいろのさかなのもとへやってきた新しい仲間・ウンベルト。彼は大変な情報を持ってきましたが……。いろいろな情報が錯綜する今だからこそ、真実を見極める目を持つことの大切さや不安に対処する方法を語り合いたい。そんなフィスターさんの想いがこもったシリーズ最新作。

 

●作者
マーカス・フィスター

1960年、スイスのベルンに生まれる。高校卒業後、ベルンの美術工芸学校の基礎科に入学。その後、グラフィック・デザイナーとして、1981年から1983年までチューリッヒで働く。カナダ、アメリカ、メキシコを旅行ののち、帰国後はフリーランスのグラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活躍している。主な作品に「ペンギンピート」シリーズ、「うさぎのホッパー」シリーズ、「にじいろのさかな」シリーズなどがある。1993年、『にじいろのさかな』はボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞。「にじいろのさかな」シリーズは、世界で3000万人に読まれる大ベストセラーとなっている

●翻訳
谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)

1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、『定義』(思潮社)、『女に』(マガジンハウス)、『ことばあそびうた』(福音館書店)、『はだか』(筑摩書房)、『世間知ラズ』(思潮社)など多くの詩作がある。ほかに、レコード大賞作詞賞受賞の「月火水木金土日の歌」、テレビアニメ「鉄腕アトム」の主題歌などの作詞、『スイミー』(好学社)などのレオニの絵本や『マザー・グースのうた』(草思社)、「スヌーピー」シリーズ(角川書店)、「にじいろのさかな」シリーズ(講談社)の翻訳など、幅広く活躍。1975年に『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1988年に『はだか』で野間児童文芸賞、1993年に『世間知ラズ』で萩原朔太郎賞などを受賞。


文/高木香織